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建築時から省エネ 取引先交えて排出減 菰田正信・三井不動産社長

脱炭素社会 創る

三井不動産は2021年11月、「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」を発表した。30年度の温暖化ガス削減率目標(19年度比)を30%から40%に引き上げ、50年度までにネットゼロをめざす。電力のグリーン化を国内全施設に広げる一方、建築時の二酸化炭素(CO2)排出量削減に取り組む。菰田正信社長は「建設会社を巻き込み省エネの建物を造るにはスピード感が必要」と力説。23年度中にすべての施工会社に排出量算出を求める考えを示した。

グリーン電力、国内の全施設へ

日本政府が30年度の温暖化ガス排出量削減目標(13年度比)を26%から46%に引き上げた。これを受け、グループ行動計画では当社の削減目標を30%から40%に引き上げた。オフィスビルや物流倉庫、商業施設、マンションなど幅広い建物を手がけている。具体的にどうやるか。まずは省エネだ。

これから造る建物、あるいは既存の建物の省エネ性能を上げていく。オフィスビルならばZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)相当、住宅ならばZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)相当の認定を取得する。そうは言っても、例えば高層ビルは全体の床面積に比べ太陽光発電パネルを設置できる屋上などの面積が小さく、それだけではカーボンゼロにならない。

メガソーラー30カ所に

そこで使用する電気をグリーン化する。太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電気を使う。当社は全国5カ所のメガソーラー(大規模太陽光発電所)で年間約8000万㌔㍗時の電気を発電している。30年度までに30カ所、約5倍の3億8000万㌔㍗時に拡大する計画だ。運営する国内170施設すべてでグリーン電力に切り替える。不足分は東京電力エナジーパートナーなどと組んで、非化石証書を取得する。

オフィスビルのテナント企業には21年4月にグリーン電力の提供を始めた。利用・導入検討企業は約100社に上る。通常の系統電力に比べ若干コストは高いものの、テナント企業も株主や取引先、消費者に気候変動問題にしっかり取り組んでいる姿勢を示す必要がある。

30年度まで10年を切っており、相当なスピードで取り組まなければならない。司令塔となる「サステナビリティ推進部」を21年10月に設置。さらに22年4月にはビルディング本部の環境・エネルギー事業部と統合して「サステナビリティ推進本部」に格上げする。カーボンニュートラルのみならず、廃プラスチック、生物多様性など会社全体のサステナビリティー(持続可能性)をつかさどる。

カーボンニュートラルは昨年に続き今年も最重要課題と位置付けている。グループ会社の社員も含めて意識を高めるために「社内炭素価格制度(インターナル・カーボン・プライシング=ICP)」を1月に導入した。新規開発物件でどれぐらいCO2を排出し、それをお金に換算するといくらと認識してコスト意識を持って、自分たちの施設の省エネをさらに進める狙いだ。「1000㌧出している」と言われてもピンとこないが、金額換算して「1000万円」と言われると「そんなにかかるのか」と思う。

新たな算出ルール開発

建築時のCO2排出量削減に向け、建設会社などサプライチェーン全体で連携する。23年度中には見積もり段階ですべての施工会社に排出量算出を求める予定だ。パリ協定に基づくSBT(科学と整合する温暖化ガス削減目標)では、建築費に係数を乗じてCO2排出量を算出するが、省エネ建築物の方が通常より建築費が高くなる。このため省エネ建築物ほどCO2排出量が多いとみなされてしまう問題があり、新たな算出ツールをSBT適合を見据えながら開発中だ。

北海道の道北を中心に約5000㌶の森林を保有している。当社の森のCO2吸収・固定量は1万7251㌧(20年度)に上る。「〝終わらない森〟創り」と名付け、森林資源の循環に取り組んでいる。「植える、育てる、使う」のうち「使う」が必要だ。東京・日本橋で計画中の17階建て木造高層ビルに当社の森から切り出した構造材や内装材を使う。商業施設のバルコニーの床材や子供向け遊具にも間伐材を活用している。

政府も、企業も、消費者も、あらゆる手を使って脱炭素に取り組む以外に解決の道はない。みんなが自分ごととして取り組む脱炭素社会を実現したい。

排出量の少なさ、発注先選定の条件に


 三井不動産は建築時の二酸化炭素(CO2)排出量を正確に把握するツールを整備し、総合建設会社(ゼネコン)などに削減計画書の提出を入札・見積もりの際に義務付ける。2022年度中にそのためのツールを開発し、ゼネコンに提示。23年度からの適用を視野に入れる。ゼネコンや資材メーカーを巻き込んだサプライチェーン全体でのCO2削減を推し進める。
 三井不動産のCO2排出量(19年度)は約438万㌧。うち自社が排出する「スコープ1」「スコープ2」は12%だ。残る88%は取引先が排出する「スコープ3」だ。スコープ3のうち川上が3分の1。建物の運営段階による排出が45%、建築段階が50%、その他が5%だ。建築段階のスコープ3はゼネコンのスコープ1、2でもある。
 鉄骨やセメント、ガラスなど資材・建築材料のCO2排出量を算出。新たに作る計算ルールに従ってゼネコンに排出量を出してもらう。価格や性能に加えて排出量の少なさを考慮した発注方法に変えるという。
 菰田正信社長は「ゼネコンを巻き込み省エネの建物を造っていくにはスピード感が必要。ゼネコンや設計事務所にも基準づくりに入ってもらう。これがモデルケースになれば他社が使うのもウエルカムだ」と話す。省エネ性能が高く価格を抑えた新築の建物が増えるよう促す。
 一般消費者が購入する分譲マンションなどでも策を講じる。1戸ずつ電力小売り事業者と契約する低圧契約ではなく、マンションの管理組合などがまとめて契約する「高圧一括受電」を用いて、グリーン電力を供給する仕組みを検討している。一般に6000万円クラスのマンションは断熱ガラスや空調設備、太陽光発電パネルなど省エネ設備を導入することで300万~400万円高くなるとされる。省エネ住宅の普及には、住宅ローン減税の拡充など政策の後押しも欠かせないという。
 菰田社長は消費者の気候変動に対する意識が変わりつつあると実感している。グループの三井ホームが21年11月に完成させた木造賃貸マンション「MOCXION INAGI(モクシオン イナギ)」(東京都稲城市)は周辺の家賃相場より高い。それでも「気候変動にやさしい住宅に住む満足感があるためか、(1980~95年に生まれた)ミレニアル世代を中心に人気だ」と説明する。値段が多少高くても、環境に配慮した商品・サービスを選ぶ消費者を増やすことにつながる。

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