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再エネ広げ地域共創 課題解決へ一歩先に 中西勝也・三菱商事社長

脱炭素社会 創る

三菱商事は2024年度までの3カ年の中期経営計画で、EX(エネルギートランスフォーメーション)関連投資に1.2兆円を投じる方針を明らかにした。30年度までに2兆円の計画だったが、脱炭素社会の実現に向けて一気に加速させる。4月に就任した中西勝也社長は「社会課題を解決することで会社を成長させたい」と話す。脱炭素への動きが加速するなか「半歩先、一歩先を行く取り組みで時代を変えたい」との強い思いがにじんでいる。

3年で1.2兆円 安定供給も確保

「中期経営戦略2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」を5月10日に発表した。24年度までに年間1兆円規模の営業収益キャッシュフロー(CF)を生み出しつつ、低成長・低採算事業の売却により1.5兆円の投資回収CFを得る。一方、3年間で約3兆円規模の投資を計画している。そのうち原料炭、食料、自動車など当社の収益を支える柱には約1兆円、サプライチェーン(供給網)の最適化や都市開発などの「DX(デジタルトランスフォーメーション)・成長投資関連」には約8000億円を投じる。

カーボンニュートラルの実現に資するEX関連には約1.2兆円を投じる。再生可能エネルギー、水素やアンモニアといった次世代エネルギー、電化に必要な銅、天然ガスなどだ。

21年10月に発表した「カーボンニュートラル社会へのロードマップ」で掲げたEX関連投資は30年度までに2兆円。ロシア・ウクライナ情勢で欧州ではエネルギーの脱ロシア化が進みつつあるなど、エネルギー安全保障が大幅に変化している。こうした議論の中で日本では再エネがさらに普及すると見込み、スピードを上げて脱炭素化とエネルギー安定供給の両立を実現したいと考えた。

低炭素から脱炭素へ移行

21年度末の事業ポートフォリオ(投融資残高の内訳)はEX関連が3割だ。24年度末に4割程度、30年度末には5割程度に増やす。EXといっても一気に脱炭素になるわけではない。まず低炭素があって脱炭素に行きつく。トランジション(移行)を経てカーボンニュートラルを達成するわけだ。石炭に比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少ない天然ガスはEX関連の投資としている。30年度まで10年弱の時間軸で増やし、円の大きさ(投融資残高)が大きくなる。

EXをけん引するのは洋上風力に限らず再エネ全般だ。洋上風力も技術革新がないと一気に浮体式にはいかない。コストも課題で、洋上風力がすべてとは考えていない。陸上風力も小水力も選択肢になるだろう。

電力は今の技術ではつくった分だけ使う「同時同量」だ。供給と需要が見合ってなければならない。再エネは地産地消で、地域でつくり地域で使う分散電源だ。いかに地域を巻き込み還元していくかも課題だ。太陽光や陸上風力など地域でつくった電気をCO2フリーのグリーン電気として使ってもいいし、余れば電力を蓄えておける水素やアンモニアに変えればいい。

知見生かし洋上風力落札

20年に買収手続きを終えたオランダの総合エネルギー企業エネコのノウハウが日本で生かせる。オランダなど3カ国に600万件の顧客を持つ。人工知能(AI)を駆使して自前の風力の発電量や消費量をシミュレーションしている。10年以上に及ぶ同社とのパイプを生かし、21年末には日本の洋上風力3海域を落札することができた。

日本のエネルギー自給率(19年)は12.1%。経済協力開発機構(OECD)加盟の36カ国中35位だ。東日本大震災前に54基あった原子力発電が廃炉を経て33基。うち稼働済み(定期検査中を含む)は10基だけだ。石油や液化天然ガス(LNG)などは海外に頼っている。エネルギー安全保障上も再エネで自給率を上げる必要がある。

自給率は洋上風力以外も丁寧に開発しないと上がらない。ウクライナ危機で一時的に化石燃料の使用が増え脱炭素化は足踏みするかもしれないが、世の中全体の流れは速くなる。半歩先、一歩先を行く取り組みをすることが時代を変えていく。

三菱商事グループの総合力強化による社会課題の解決を通じてスケールの大きな共創価値を継続的に生み出したい、新たな価値創造につなげたい。これが中期経営戦略を立てた一番の思いだ。脱炭素や地域コミュニティーとの共生など、社会課題の解決で会社を成長させたい。

成長へ種まき、矢継ぎ早にEX・DX投資


 三菱商事は成長戦略として「EX・DX一体推進による地域創生」を掲げている。
 ペルー・ケジャベコ銅鉱山の権益追加取得、運輸運送の効率化に役立つデジタル地図大手HERE(ヒア)テクノロジーズへの出資、CCU(CO2の回収・再利用)技術を持つカナダ社への資本参画・業務提携、シェルカナダとの水素・アンモニア製造に向けた覚書締結……。
 2018年以降、矢継ぎ早に繰り出したEX・DX関連の取り組みは主な案件だけでも20近い。最近では米マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏の脱炭素関連ファンドに出資した。
 なかでもカギを握るのが中部電力と共同で約5000億円を投じて買収したオランダのエネコだ。同社の株主はもともとオランダの44自治体。洋上風力など再エネをベースロード電源としてオランダ、ベルギー、ドイツの3カ国の約600万の家庭に電力やガスを供給している。
 三菱商事の中西勝也社長は「資金力のある当社が株主になり、スピード感を持って地域の要請に応じた新事業を実現できる。デジタル技術を使い今までできなかったことができる。それがエネコの良さだ」と話す。エネコはアムステルダム・スキポール空港にグリーン電力を供給するなどBtoB(企業向け)も強い。洋上風力の電気で水を電気分解し、グリーン水素をつくるプロジェクトも進行中。そのノウハウを日本でも生かす。
 三菱商事が描く未来図はこうだ。数万人規模の都市で風力、太陽光、小水力といった再エネを使ってグリーン水素やカーボンフリーの製品を製造。新産業を興して地域に雇用を生み出す。街では再エネの電気を蓄電し、電気自動車(EV)やオンデマンド交通に利用する。地域の農水産品のブランド化やインバウンド(訪日外国人)による観光振興などで地域経済を活性化し、魅力ある街に育てる。
 中西社長は「地域が元気にならないと日本という国がダメになる。人口の一極集中を解消する最後のチャンスだ。当社の考える『未来創造』で実現したい」と意気込む。
 22年はすでに熊本県八代市や岡山県倉敷市と連携協定を締結した。21年末に3海域を落札して注目された洋上風力の地元、秋田県や千葉県でも地域活性化の取り組みを始めているという。「30年度の温暖化ガス半減(20年度比)、50年度の実質ゼロ」。21年10月に掲げたカーボンニュートラル目標にとどまらない「共創価値」を全国各地の自治体や地域の住民、多くの企業と生み出す意向を示している。

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