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ワーケーション「沖縄流」の挑戦

観光+α、地域課題に産業呼び込む

仕事と休暇を組み合わせた働き方「ワーケーション」の受け入れを探る自治体が増えている。沖縄県では企業誘致策を固有の観光資源に結び付けて誘客を図るほか、地域との共創を視野に入れて創業支援する動きが広がってきた。来訪体験者の起業や事業展開が進み、地域課題に取り組む県外企業の進出例も生まれた。長期化する新型コロナウイルスとの戦いが続き取り組みは手探りだが、「沖縄流」に長期戦略としての期待が高まっている。

共創へ拠点新設 会社研修でフィールドワークも 

「こんなホテルをコザにつくりたい」。6月14日夕、沖縄県沖縄市の中心街コザにある創業支援施設「スタートアップラボ ラグーン」。ホテル運営を手がけるリンナスデザイン(金沢市)の社員と関連会社代表が、2日間のワーケーション研修の成果として仮想ホテルの建設計画を発表した。

フィールドワークで集めた情報を基にコンセプトを決め、施設やデザイン、イベント案、売上高予測、投資利回りなどを詳細に盛り込んだ。「2年後のゴールデンウイーク前までに開業」と締めくくると、聞き手から「ぜひつくりましょう」と声がかかる。仮想ながら、それほど具体性を感じさせる中身だった。リンナスデザインの松下秋裕最高経営責任者(CEO)は「運営スタッフらにも数字的な感覚を養ってほしいという目的は達成できた」とうなずいた。

県内外の起業家やワーケーション客らが集まる拠点として2019年に開業したラグーン。元代表の豊里健一郎氏は「ビジネス面で成長し、新しい学びや気づきを得てもらいたい」と、3日間程度の研修を主体にしたワーケーションに注力する。それを機に県内で起業したり、事業展開したりする企業も少なくない。

MAIA(マイア、東京・港)の月田有香CEOもその一人だ。21年5月、沖縄市に支社を開設。豊里氏らと話す中で、シングルマザーが多いうえ、低賃金で働く女性たちの離職率が高いという沖縄の地域課題を認識し、女性向けIT(情報技術)人材教育・就労支援という自社業務で解決に一役買えると考えた。デジタルスキルを学んでもらい、東京の会社のIT関連の仕事をリモートで請け負うことで、高賃金での就労につながったという。

地元の活性化を促す「産業振興型」のワーケーション誘致には県の外郭団体、沖縄ITイノベーション戦略センターと内閣府沖縄総合事務局も旗を振る。両者は21年11月、46の関連イベントを集結したワーケーションウィークオキナワを開催。「ワーケーション情報の対外発信力を高められた」(同事務局)としている。

「旅行主体」でも工夫 長期滞在・消費促進に期待


 沖縄県は、豊富な観光資源を生かした「旅行が主、仕事が従」のワーケーションも「観光の一形態としてプロモーションしていく」(観光振興課)戦略を進める。武器となりそうなのは「沖縄で働くウエルネス効果」。県が2021年11月、同一人物を対象に沖縄と東京で比較実験したところ、沖縄の方が「やる気」「ひらめき力」が向上し、集中度やストレスでも良い結果が出たという。
 テレワーク環境など受け入れ施設の整備も進む。沖縄総合事務局は21年度までの2年間で計57施設に整備費を交付。対象はホテルやコワーキングスペースが多いが、沖縄空手会館が申請した「空手ワーケーション」も採用された。
 沖縄への観光旅行は平均「3泊4日」とされ、観光消費の伸び悩みも課題になっている。だがワーケーションの場合、同事務局の調べで県内滞在日数は平均11・8日と長く、平均消費額も一般の観光客を大きく上回っている。長年の課題が解消に向かう可能性もありそうだ。

広がる自治体の誘致 企業意識と温度差も

コロナ禍でテレワークが定着する中、政府がワーケーションに言及し始めたのは2020年7月に「Go To トラベル」を開始した直後で、観光需要喚起の側面が大きかった。それに先立ち、17年度からワーケーションに取り組んできたのが和歌山県だ。企業誘致が主目的で、21年度まで5年間の体験者は県が把握するだけで159社、1373人を数える。

その後、19年11月に同県などを中心にワーケーション自治体協議会が発足した。今年5月現在の加盟自治体数は207。設立時の3・2倍に拡大しており、増加基調が続く。

加盟に際してどの部局を登録するかは様々で、観光関連が約3割、産業振興関連が2~3割、移住・定住関連が約2割で、残りは企画系など。ワーケーションに何を最も期待するか、各自治体の思いがにじむが、和歌山県情報政策課の桐明祐治課長は「一貫してキーワードとなるのは関係人口」と分析する。どの自治体も多様な形で地域とかかわり続ける人を増やしたいと考えているようだ。

観光庁の21年度調査によると、ワーケーションの考え方を認知している企業は66・0%、導入したのは5・3%。従業員では認知が80・5%、経験ありが4・2%だった。徐々に広がるワーケーションだが、知ってはいても実行はまだ、というのが実情か。今後は企業の意識変化に加え、ニーズとマッチしたプログラムを提供するなど、受け入れを探る地域側の工夫も問われることになりそうだ。

個人・企業・自治体の総合アクションを 山梨大学教授(観光政策)田中 敦氏


 政府が本格的にワーケーションを取り上げ始めて2年足らず。必ずしも推奨しないが、黙認はするという会社において、色々な働き方をしてみようと考える個人が取り組んでいる。一方、地域の人々との共創やコミュニケーションを通して自社の人材育成や課題解決につなげたいと考える企業では導入が広がっている、というのが実態だ。
 短期間でこれほど急速に知名度が上がりながら、意味は曖昧なまま、という言葉も珍しいが、既に多様なワーケーションが生まれている。個人や企業、自治体の取り組みを総合的なアクションへつなげていくには、コロナ禍の動向も見つつ当事者それぞれが何を大切にするかという視点を整理し、ワーケーションの利点を上手に育てることが大事だろう。

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