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37%の食料自給率、どうやって高めますか?

読者の提案と社長の講評 中家徹・全国農業協同組合中央会会長編

think!多様な観点からニュースを考える

中家会長の提示した「37%の食料自給率、どうやって高めますか?」という課題に対し、多数の投稿をいただきました。紙面掲載分を含めて、当コーナーでその一部を紹介します。

■3つの農業体験

池田 澪(札幌国際大学人文学部3年、22歳)

自給率が上がらない原因は、我々が意識して食に目を向けていないという点が考えられる。今回の提案は、普段目にする情報を基に考えた3パターンの農業体験である。1つ目は「農業良い所取り」。家族持ちや学生さん等をターゲットにした収穫メインの体験だ。収穫後実食し、希望があれば家でできる簡易キットもプレゼントする。2つ目は「長期育成体験」。本格的な農業体験を希望する人達を対象に、実習を行うことで若い就農候補を生み出せる可能性が出てくる。3つ目は「商品過程体験」。飲食店の会社の新人研修に農業体験を入れ、自分達がどういう商品を扱うのか改めて確認し、その後の販売や商品開発に役立てるきっかけにしてほしいと思う。多くの人たちに、食について考える機会を設けることで、どうやって自分の手元まで食品が来るのかを知ってもらう。食のありがたさを再確認し、食品ロスの防止につながり、国消国産の意識が高まることを期待する。

■農業実習の必修化

滝沢 大地(会社員、37歳)

子供たちへの農業実習の必修化が望ましいと考える。具体的には「実学」として小中学校での農業を必修化し、成績評価の対象とする。学校の部活動として農業部を増設する。高校入試、大学入試にも使えるように、各種コンペや推薦入試をすることなどである。教員に加え、地域で農業経験がある高齢者などに報酬を与え、指導や協力を仰ぐ形が望ましい。もともと農業と教育の相性は悪くない。化学、統計学などの学問的要素と、人との協調性や協力が求められる。情操面でも真面目さ、忍耐強さ、根気強さといった、古き良き日本人の美徳は、農業を通じて育まれてきた面も大きかったのではないだろうか。学生がスポーツに打ち込むように、農業での活躍が進路選択にもプラスになるようにすれば、多様性のある人材育成にもつながる。土も人も時間をかけて育てるもの。教育の充実は就農人口の増加だけでなく、食品ロスを減らし、農学研究の進歩にも貢献するだろう。

■農業税をつくる

斎藤 理門(学校法人石川高校1年、16歳)

自分が思いついた解決策は、所得税、住民税のような税金を農業でもつくることだ。国内農業の振興のために、国民に広く課税する「農業税」をつくるのだ。近年の日本は、食料の多くを海外からの輸入に頼っている。なぜこれほどにも食料自給率が下がっているのかを調べたところ、輸入食料が増えて農業経営が圧迫され、生産量が減少しているという要因があった。農業経営が圧迫されると、当然、農業人口は減少し、さらに生産量も減少していく。そこで、農業税で集めた税金を使い、農作業用の機械を買ったり、日本でしか作ることができない農産物を海外に輸出できるよう、品種改良などもしながら作ったりする。初めのうちは国民の反発を受けるかもしれないが、何年かたてば、農業税も浸透した世の中になるだろう。消費税の税率が上がった時も、最初は反発がありながらも今は浸透している。このことで日本の農業は促進され、おのずと食料自給率も上がると思う。

【以上が紙面掲載のアイデア】

■給食制度改革を

池田 幸夫(会社員、59歳)

日本人の食文化は戦後から77年経過し、欧米の食文化に変容してきた。その要因の1つとして給食にパン食が導入されたことも大きい。また食生活レベルが改善され、肉食が増え、小麦・大豆・トウモロコシ等の輸入により自給率は低下してきている。食料水準レベルを変えずに自給率を上げるためには、子供の食文化を変える必要があり、そのためには公立小中高はすべて給食(地産地消)とし、全額公費負担とする。コメ以外の農畜産物も基本は国産とすることで、自給率は徐々に回復する。結果として共働き世帯・母子家庭等への負担も軽減され、子育て支援・少子化対応・日本食文化の醸成にもつながる。健康志向・高級志向・食が細い世代に「国消国産」をうたっても効果は少ない。食べ盛りの子供が食文化を変えることで、将来にわたって日本食を食べ続けることになり、給食費を公費負担する程度で、自給率を向上できるのであれば効果は絶大である。

■小さな「地産地消」

山田 彰英(会社員、28歳)

地域住民が共同で農業を行うことを提案したい。地域住民といっても、市区町村単位ではなく、さらに小さな町内や隣近所の人々を想定している。地域内だけですべての農産物を生産する必要はない。その地域の土地に合った農作物を育て、ほかのものは別の地域から買うなり、物々交換するなりすればよい。その町内や隣近所で食べる分だけ育てるなら生産過剰にならず、たとえ多く生産したとしても、別の地域への販売や物々交換で食品ロスの削減にも貢献できると思う。地域間での流通が生まれることで、国内での消費が促進されると考える。そして何よりも共同で運営するには、住民同士の交流や対話が必要になる。地域には老若男女、様々な人が住んでおり、それぞれ異なる経験や人生を歩んでいる。そういった人たちが交流し、知恵や経験を生かせる場としても農業は有効と考える。小さな「地産地消」の取り組みが、地域の、日本の課題を解決する手段になることを願う。

■山村留学を広める

森 美沙音(関東学院六浦高校1年、15歳)

山村留学を広めるのがいいと思う。食料自給率の低さには、生産者の減少が大きく関係している。都会暮らしで、自然や農業と関わりがないまま成長した人が多くなっているのが理由のひとつだろう。田畑に根を張る農作物や生きた家畜をまともに見たことがない人が、農業を職業にしようなどと思うはずがない。だが、そんな人でも山村に行けば、生きた自然に触れる機会が増える。山村留学にはぜひ、農業体験も組み入れたい。生産者の苦労や収穫の喜びなどをほんの少しでも味わうことで、農業に興味を持つ人が増えるはずだ。必ずしも「農家になろう」と思わなくてもいい。こうした経験をすれば国産の農畜産物を買い、国産の食材でつくった料理を食べるように変わるはず。それは自給率に好影響をもたらすだろう。私を含め都会の便利さの中で当たり前のように過ごしている若い世代が、自然に触れる機会を増やす。これが日本の食を守る方法のひとつになると思う。

■昔ここは駐車場だった

佐藤 清忠(嘱託職員、72歳)

2060年、とある住宅街。玄関脇の大きな長靴のような箱。そこは昔、駐車場だった。いま野菜栽培装置が置かれ、人工知能(AI)が栽培している。箱には表示機能があり、「トマト5個食べごろ」「ナスは明日まで待て」などメッセージが出る。AIやメッセージ表示、箱内のエアコンなどの動力源は太陽光パネルだ。箱は、家の冷蔵庫に何が保存されているかもわかっており、冷蔵庫に移すとか、野菜と何をあえるなどと指示がくる。カーボンニュートラル対策になっており、指示に従うと「地球環境ポイント」が増え、褒められるので楽しくなる。家の前は電気自動車(EV)のロボットの走行軌道があり誰も自家用車を持たなくなった。かつての駐車場スペースは電気を使わない食材保管庫の箱として活用することで、自然に旬の食材を食べ、環境負荷を小さくすると同時に食料自給率も向上した。栽培や調理指導など様々な機能があるこの箱は諸外国も設置促進することになった。

■公園の中に農園を

羽田 吏伽(家事手伝い、25歳)

野菜を自分で育ててみたい気持ちはある。しかし、種まきの時期や肥料の種類、害虫対策などとあれこれ考え始めると、複雑で心が折れてしまう。初心者にとっては、小さなベランダでの家庭菜園ですら満足にできるか怪しい。農業がもっと身近だったら挑戦しやすいのに、と思う。そこで、公園の一部を農園にしてみてはどうだろうか。習熟した人に主な管理者になってもらったうえで、それ以外の人は誰でも自由に農作業に関わることができるようにするのだ。ブランコやすべり台などの公園の遊びのひとつに農業体験が加わるイメージだ。収穫した農作物は公園の利用者で消費してもいいし、地域の飲食店や子ども食堂などで使ってもらってもいい。これなら一度きりの体験に終わらず、継続的に農業に触れやすいのではないか。食料問題について考える機会もおのずと増えるだろう。公園の中の農園での体験が、本格的に農業に携わるきっかけになれば好循環だ。

■品目ごとの事業計画

高橋 哲彦(大学教員、64歳)

例えばトウモロコシとバレイショは、北海道で国内自給率を5年で50%に、10年で70%にすると目標を立てる。実現のための具体策として、製品構成、売価、売り上げ目標を立てる。必要な人材募集、事業所(農園)の拡充などの、成長戦略を描く。今埋もれている資産(廃棄物)を有効活用して、2次産品(飼料、レトルト加工品、外食産業への提供)も事業に組み込み自給率を高める。政府の助成金も活用する。これを、九州のサツマイモ、高知の温室野菜、関東の小麦・豚、北陸のコメなど、10か所10品目程度を企業の事業部制のような形で管理し成長戦略を描く。他産業を見れば、このような戦略的事業計画を立て実行して国際競争力を高めてきており、他産業からの事業計画策定ノウハウを導入するのがよい。人材の農業分野への移動もあってよい。かつての、半導体産業や自動車産業と同様、農業を戦略産業として育てていく。今こそ産業としての農業を戦略的に考える時期と思う。

■農畜産業の体験施設

真田 麻央(早稲田佐賀中学1年、12歳)

日本の食料自給率を上げるには、生産者の後継者を育て、食品ロスを抑えることが必要だ。職業の実体験を手軽にできる施設に、農畜産業の体験施設を加えるのはどうだろうか。いくら講義をしようが、ニュースや新聞で情報発信しようが、人間は話で聞くより体を動かし実際にやってみるほうが印象に残りやすい。これから先の仕事をするのは子供だ。楽しくできるほうが将来やりたいと思うきっかけになると思う。農業の体験ができるのは実際に行っている現場の田畑だが、現場に行くことや、アポイントを取るのが大変だ。体験施設では完璧に再現するのは難しいかもしれないが、似たようなことができ、どのような職業なのか知ることができると思う。食品ロスについては地産地消を心掛けられるようにすべきだと思う。地元のものを買ったらスタンプがもらえて、すべて集めると何かと交換できる楽しみがあると親しみやすく、やる気が出ると思う。

■食料を必須科目に

相川 晴康(会社員、61歳)

長年、農業や漁業に従事する人口が減少し、食料自給率の低下が懸念されているにもかかわらず、ここまで効果的な策が講じられてこなかった。では、どうしたらいいのか。食料と水の確保こそが人間として安定した生活を送る基本である、という原点に立ち返ることだ。すなわち、幼稚園から大学までの全ての教育課程で、食料を確保する具体的な工程を必須科目とする。そして、各自治体や企業が協力し、地域の特性をいかして農作物や魚介類の製造を手掛けるのだ。日本は豊かな自然をいかす労作業から逃げ、輸入に頼る生活様式に慣れきってしまっている。小手先だけの取り組みでは、この課題の克服はできない。フランスでワイン製造を手掛ける農家を見学したことがある。その姿は、なんと誇らしくすてきな笑顔であったことか。若者や企業が誇りを持って自給率の向上に取り組める社会を構築するには、教育の再構築しかない。急がば回れ。今からでも決して遅くない。

■国産の代替肉作ろう

劉添元(札幌国際大学人文学部3年、24歳)

食料自給率を高めるために、工業製品として代替肉を量産することを提案する。農林水産省によると、2020年日本産の飼料で生産された日本産の牛肉は全体の9%、豚肉は6%、鶏肉は8%にすぎなかった。日本の農業生産力がそれほど高くないため、第一任務はコメなどの主食の自給率を守ることで、飼料の自給率が低いのもおかしくないだろう。そのために、植物農産物の消費量が少ない代替肉を使用したら両立できると考える。代替肉には様々な種類がある。例えば大豆や昆虫に由来するものや、動物細胞を培養する培養肉もある。どちらにしても、消費者が受け入れるには時間がかかる。ただ工業製品のため価格のメリットもあるので、安い価格を利用して行き渡らせることができると考える。結果として肉の生産量を高められるだけではなく、もともと飼料を与える土地は主食を生産するために利用することができる。一石二鳥ともいえるだろう。

■農業から農楽へ

大塚 遥香(公務員、33歳)

家庭菜園で野菜を作ろうと思い立ったことがあった。植物を育てるのは実に20年ぶりで、やり方が分からず頓挫した。私のように、野菜などを育てたいけれど難しそう、よくかわからない。そう感じている方も多少なりともいるのではないか。こうした心理的障壁をなくし、自分たちが食べる野菜などを自ら賄うことで食料自給率の底上げが期待される。そのためには「農業は楽しい!ハードルは高くない」と思える実体験が有効だと思う。具体的には小学校から大学まで「農業」「食育」などの授業を取り入れ、実際に野菜やコメなどを育てる。そして収穫した物を食する体験を多く積むことで、知識と経験にする。農業の楽しさ、命の大切さも同時に学べる。私の体験は、小学校のミニトマトが最後。野菜を育てたり、養蜂や酪農などの体験をもっとしたかった。お店の物はおいしい。けれど、たまには、夕食の材料がすべて自分の庭でとれたときだって、あったらすてきじゃないか。

■大手こそコメでパンを

菅原 寛乃(仙台市立南材木町小6年、12歳)

カロリーベースの食料自給率は、カロリーが高く消費量が多い食物の自給率に左右される。例えば、コメや小麦などだ。コメの自給率は100%に近いが、小麦は2020年度で15%と、多くを輸入に頼っている。小麦の生産量を増やして自給率を上げるのは、日本の現状を考えると難しい。そうであれば、小麦を使用している食品を他の食品に置き換えれば、小麦の輸入量が減り、食料自給率も高まると考えられる。そこで、私はパンに着目した。店頭に並んでいるパンは小麦粉が主原料のものが多いが、パンは米粉からも作ることができる。大手企業は自給率の高いコメを主原料としてパンを生産・販売したらどうだろうか。小麦よりも余っているコメを活用した方が、コメ農家もより多くの収入を得ることができる。生産者が農作物の生産量を変えるのではなく、農作物を大量に扱う大手企業の考え方を変えることによっても、食料自給率を高めることができると思う。

■最先端の野菜工場

坂井 もも(主婦、52歳)

日本が持つ最先端の科学技術を使った解決を提案したい。ビルなどの屋内で、疑似日照や温度、湿度、栄養素をハイテクノロジーによって管理する野菜工場の開発だ。専門知識と長年の経験を要する農業は参入がとても難しい。また重労働のイメージもあることから後継者が育ちにくい一面もある。加えて昨今は、豪雨や猛暑などの異常気象リスクも抱えており、食料自給率を高めるには生産の効率化と安定化が欠かせない。季節や場所を選ばずに栽培できる野菜工場が発達すれば、農地だけでなく都市部の空き地や高度の空間を活用でき、管理システムによって誰でもどこでも農業を営むことができるようになる。地産地消を促すことになるので輸送燃料の削減にも効果があるだろう。完全無農薬も実現できるかもしれない。さらには、その技術を海外に輸出できれば、わが国だけでなく他国の自給自足を支援することにもつながり、世界の食料危機解決にも貢献できるだろう。

■足元から変える工夫

長谷部 さとみ(元中学教員、57歳)

多くの人は話題の商品やおいしいと人気の食べ物に、たくさんのお金をつぎ込んでいるのではないか。国産の小麦と卵で作った食パン、国産のブタで作ったチャーシュー、糖度がやたら高いトマトやメロンなどだ。農作物をそのまま売っていくだけでは厳しい面もある。ならば、産地で特別な商品にして販売していくシステムとアイデアをどんどん集めていくことで、日本独自の地産地消ができると考える。地元の小学生から高校生に協力を依頼し、総合学習の中で地元の材料で作る地元のおいしいものをインターネットで売っていく。子どものころから食に関する興味関心を高め、自分たちで考えたものがインターネットでビジネスとして出せるという経験をすることで、お金の感覚も身に付く。小中学校の給食に自分たちがプロデュースしたものを出し、まずは給食を地元の食材100%にすることから始めてもいい。足元から変えていく工夫をしていきたい。

■環境教育で自給率高める

稲村 大輝(産業能率大学経営学部3年、21歳)

私は環境教育で日本の食糧自給率を高めたいと考える。なぜなら、環境教育を行うことで、世界的な異常気象を把握でき、持続可能な社会を実現できるようになると考えるからである。現代では持続可能な社会を実現するために、SDGsを中心とした環境保護活動が行われている。そのため、緑色の社会を創るためには、環境教育が重要である。環境教育では、子供たちを集め、持続可能な社会を実現するための方法を教える。お互いに議論を行い、双方向に勉強していくことで、より一層学びを深められる。具体的には、環境問題に取り組む背景や目的などを議論し、答えを導き出す。また、着目点を評価して、欠点の指摘やそれを補う方法を考え、新たな意見を付加する。これにより、子供たちの主体性を引き出すことができ、一人ひとりが当事者意識を持って環境問題に取り組むようになる。そして、持続可能な社会を実現でき、日本の食糧自給率を高められると考えている。

■食品ロスを世界で生かす

望月 利昭(会社員、44歳)

日本の食品ロスは年間約500万トンを超え、世界では毎年約13億トンの食料が廃棄されている。最新の食料残渣(ざんさ)を使ったバイオマス発電からは農家が使用できる品質の肥料を作れるという。国内で食品ロスを減らす努力をすると同時に、食品残渣からできる肥料を農家に配布して生産を奨励する。さらに、この肥料は政府開発援助(ODA)として活用する。例えばコロナ禍で経済危機に陥ったスリランカでは化学肥料が禁止され、農家が打撃を受けている。ここに食品残渣由来の肥料を提供し、作った農産物を適正な範囲でお裾分けしてもらう。つまり食品残渣による肥料で生産向上可能な農産物がある国々を援助し、対価として農産物をもらうことで、日本の食料が増加する。約13億トンの食品ロスを肥料に変え、世界で農産物を適正分配するネットワークを構築できれば、人類は、お互いの強みを他者に生かす「相互利他適正分配」社会へと向かうのではないか。

■見かけは低くても

大石 卓弥(会社員、47歳)

自給率は無理に上げる必要はないと思う。とは言え、何らかの有事が発生して海外との物流がすべてストップした最悪の場合でも、国民が飢えないよう、必要十分な食料の生産・備蓄・防衛体制を平時から整えておくことは、安全保障上、必須ではないか。まず第一には、米の減産をやめて増産に転じることだろう。市場に出す量を調節して値段を調整し、余剰分は備蓄に回そう。有事には国内の陸上交通網の分断や戦略拠点の機能喪失も予見される。全国各地に分散備蓄したり、ターゲットにされにくいように隠蔽や偽装したりすることも重要かと思う。そのための備蓄技術や設備の開発を進めるとよい。第二に、大豆に関しては国内生産を増やそう。代替肉の原料としても注目されている大豆だが、味噌、しょうゆ、納豆など、日本人の食卓には欠かせない。世界的にタンパク質が不足するため、ここ数年で大幅に需要が増える可能性が高い。ぜひ大豆の国内生産を増やそう。

■国産飼料で畜産を

駒路 和典(無職、70歳)

食料自給率を高めるには、穀物の輸入に依存しない畜産業を行えばいい。国産の粗飼料で賄う畜産では肉質の良い和牛をたくさんは得られないかもしれないが、おいしさへの追求から脱却すべきだ。私はサシにこだわった、牛の品評会を見るたびに疑問を感じる。そういう方向に畜産を位置づけながら、カロリーベースの食料自給率低下を憂えるのは、自己撞着(どうちゃく)に陥っているようにみえる。テレビはグルメの番組が多いが、食料自給率を考えている番組を見たことがない。カロリーベースの食料自給率の定義をPRしたテレビ番組を見たこともない。国民に正確な情報が伝わっていない。輸入飼料に頼らない農業を確立し、味の追求に食料自給率を加味したレシピの考案にインセンティブを与えるような誘導施策を追求すべきだ。そういう、番組のスポンサーに全国農業協同組合中央会がなったらいかがだろうか。地方の中山間には荒れた耕作放棄地がある。美食の追求をやめよう。

全国農業協同組合中央会・中家徹会長の講評

たくさんのアイデアを、ありがとうございました。アイデア募集開始後、農林水産省は2021年度の食料自給率が38%(20年度は37%)だったと発表しましたが、依然として先進国で最低水準にあります。

どうすれば自給率を高めることができるのでしょうか。アイデアから感じたのは、食と農、消費者と生産者の距離をいかに縮めるかに多くの方が関心を持っている点です。これはJAグループが目指す「国消国産」の考え方につながります。

「3つの農業体験」というアイデアでユニークだと感じたのは、新規就農者の育成につなげるという発想です。大学生たちと以前意見交換した際、どうしたら就農できるのかを聞かれました。家が農家でないと難しいというイメージがあるのでしょう。実際に体験すれば楽しさがわかり、就農への手がかりもつかめると思います。

飲食店の新人研修に取り入れるという着想も有意義です。農業の現状や課題を知ってもらえれば、より心を込めて調理・提供することにもつながると思います。

「農業実習の必修化」は、協調性や情操面の教育効果を指摘している点に引かれました。地方でも農業体験の機会が減っています。子どもたちに農畜産物をつくる喜びを知ってもらうだけでなく、人格形成でも役割を果たすことができるはずです。

「農業税をつくる」を提案してくれたのは、16歳の高校生です。食を支える農業が大切だと考え、公的に支えるべきだと思ってくれたことに感謝します。

今回アイデアを送ってくださった方の4割強は20代以下の人たちでした。若い人が食料自給率に関心を持ち、このままでは大変だと思ってくれています。今、世界的にも食料安全保障への意識が高まっています。農業者だけでなく、国民生活にとって重要課題です。食と農を未来につなぐため今できること。国産農畜産物を手にとっていただくことも農業の応援につながります。

◇――――――――――◇

ウクライナ危機をきっかけに、日本でも食料問題が注目を集めるようになりました。世界中から食材を調達することで日本の食卓は豊かで多様になりました。でも輸入物にあまりに依存するのはリスクがあるのではないか。食品価格の上昇を前にそう考えるのは当然のことでしょう。過度に保護すれば、かえって活力が損なわれる難しさはあります。一方で輸入に頼る作物の振興に、農政が正面から向き合ってこなかった点も否定できません。危機を過剰にあおることなく、長期的な視点から食料の安定供給の確保に努める必要があります。(編集委員 吉田忠則)

未来面

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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