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サッカー人生 突き抜けるため、時に自分のやり方を疑う

「自分の道はこれしかない」と肯定することで僕はサッカー人生を進んできた。そういうポジティブさがあったから、ここまで長く生き残れてきた。同時に「ここまで」であるのも確かだ。

だから、今は「あのときの判断とは別のやり方もあったんじゃないのか?」と考える。これは過去を否定することではなく、ましてや後悔でもない。自分のやり方を疑ってみるという感じだ。

今までの自分の価値観、やり方を肯定し続けると、動けなくなる。本当の意味で上には行けない。突き抜けられない。もっと大きな可能性を追求し、まったく違う未来を想像し、高いレベルに行くためには、過去を肯定しているだけではダメなんだ。

例えば、世界基準のチームをつくろうとしても日本人らしさや日本らしさを大事にし過ぎると現状を打破できず、世界基準には届かない気がする。

欧州の戦いの中で僕は日本人であることを大事に思ってきた。日本人の特性や「らしさ」を持った上で海外の選手と戦いたいと考えていた。

けれど、一定程度のレベルに達した後、日本人の謙虚さがあだになる経験もしてきた。「チームのために」という僕の思いやプレーを周りに理解してもらえることは実は少ない。「日本人はおとなしい」という固定観念は想像以上に強く、結果、サッカーの技量とは別の次元で苦しい立場に立たされる。

英プレミアリーグのレスター時代、シュートを外した後で周囲から怒声が飛ぶ前に、僕自身が怒りや悔しさを表してみせた。

それはチームメートと同じような感情表現だったが、僕には「あえて」という特別なものであった。柄にもないことを続けてひずみがあったのか、ケガをしてしまった。

海外へ行った後に日本人的なものを海外仕様に変化させるのではなく、子供のころから海外仕様のマインドを身につけていれば、無理をする必要もないはずだ。川島永嗣(ストラスブール)、長谷部誠(フランクフルト)ら欧州で長くプレーする選手たちは確固たる自分を持ち、マイペースで日本人らしさという枠に収まらない。そういうパーソナリティーを育む意識が日本の選手育成の現場にもっとあってほしいと思う。

中田英寿さんや中村俊輔さんの欧州挑戦からおよそ20年が過ぎたが、海外でプレーした選手の経験は日本にフィードバックされているのかという焦燥もある。

多くの日本人が欧州に挑戦しているけれど、いつも同じような壁にぶつかっているようにも見える。若い選手の悩みに「俺も同じようなことを経験したなぁ」と懐かしい気分に浸っている場合じゃない。その壁にぶつからないようにするために僕らの経験を生かすべきなのだから。

だから僕はまず、自分の過去を検証して、伝えるところから始めたい。

(カルタヘナ所属)

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満身創意(岡崎慎司)

サッカー元日本代表、岡崎慎司選手の連載です。FCカルタヘナでのこと、日本代表への思い、サッカー選手として日々感じていることを綴ったコラムです。

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