[社説]中国は日韓へのビザ発給停止を撤回せよ

日本人の中国入国に必要なビザ(査証)の新規発給を中国政府が突然、取りやめた。日本は新型コロナウイルス感染症がまん延する中国からの入国者に陰性証明書の提示と入国時検査を求め、陽性者の隔離をするだけで、日本人も対象だ。中国人へのビザ発給は続いている。中国は日本、韓国への対抗措置を直ちに撤回すべきだ。
林芳正外相は、相互主義に反する中国の対応について「合理性を欠く」と指摘し、「コロナ対策とは別の理由で制限するのは極めて遺憾だ」と厳しく批判した。当然の反応だろう。
中国による日本人向けビザ発給の一時停止の範囲は幅広く、韓国への措置よりも厳しい。中国は、日韓と似たように中国からの渡航者に原則、出発前と入国時の検査を義務付けるイタリアには対抗措置をとっていない。整合性に欠ける中国の今回の措置は、政治的な思惑が絡んでいるといわざるをえない。
発給停止が長期にわたる場合、日本企業の中国での活動にも大きな影響が出かねない。1月下旬からの中国の春節(旧正月)休暇明けに出張を予定していた企業関係者らの間で、中国入りを延期する動きも出てきた。
中国がウイルスを厳格に抑え込む「ゼロコロナ」政策を一足飛びに放棄した後、患者、死者の数は未曽有の規模になった。一部地方政府は、域内の感染率が9割近いと明かしている。
一方、中央政府の中国疾病予防コントロールセンターは、新規感染者数と死者数の発表を中止してしまった。国全体として感染爆発に関する正確なデータは開示されていない。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11日、中国の死者が過少報告されているとの懸念を改めて示した。
中国は2020年1月、湖北省武漢市での最初の感染症まん延を隠蔽した。その中で中国から日本への入国者から感染者が見つかった。日本はその年、東京五輪の1年延期に追い込まれ、安倍晋三、菅義偉両首相が退陣する政治的な混乱も経験している。
反省を踏まえ、再度コロナがまん延する中国からの入国者に検査を義務付けたのは、WHOも完全に理解を示す正当な行為だ。いずれの政府にも国民の健康と経済を守るべき義務がある。中国の日韓への差別的な措置は許されるものではない。