[社説]市販薬で療養しやすい環境を - 日本経済新聞
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[社説]市販薬で療養しやすい環境を

人生90年時代が視野に入り、健康上の問題で日常生活を制限されずに過ごせる健康寿命をいかに延ばすかが課題になっている。そのために重要な施策の一つが健康管理の意識を高め、軽度な体の不調は自分で手当てするセルフメディケーションの推進だ。

健康診断に注目し、医師に相談して生活習慣を見直す。適度な運動と栄養バランスの良い食事、十分な睡眠時間を確保し、自然治癒力を高める。風邪や腹痛、軽いケガなどの体調不良を起こしたときは市販薬を上手に利用して手当てする。そんな取り組みだ。

2021年の日本人の平均寿命は女性87.57歳、男性81.47歳でそれぞれ前年比で0.14歳、0.09歳縮んだ。新型コロナウイルスの影響でともに10年ぶりに前年を下回ったが、がんによる死亡確率は低下しており、長寿化の流れは続いているとみられる。

健康寿命が延び、9~12年程度ある平均寿命との差が縮めば、医療・介護費の削減につながる。だがセルフメディケーションを支える体制には課題がある。

自分の体質や症状にあった薬を適切に使用するために薬剤師の助言が欠かせない。特に処方薬の服薬情報を継続的に把握し、必要に応じて医療機関の受診を促す「かかりつけ薬剤師」の役割が重要だが、あまり浸透していない。

処方や調剤の情報を一元的に把握できる仕組みを普及させ、休日・夜間の電話相談に応じる薬局を増やす改革が要る。薬剤師の働き方を見直して服薬指導にあてる時間も増やしていきたい。

市販薬の充実も欠かせない。副作用の少ない医療用医薬品を処方箋なしで購入できる市販薬に切り替える「スイッチOTC」は停滞している。日本OTC医薬品協会の調査では、承認申請したのに5年以上審査が始まっていない、あるいは審査中が11品目もある。

海外では市販薬として買える薬が日本では買えない「OTCラグ」も指摘されている。早急にメスを入れるべきだ。

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