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リアルデータ、社会課題に生かす

SOMPO HD、保険の強み 業界越えて

あらゆるモノがネットにつながるIoTの進展を背景に、現実社会での生活や経済活動など人々の行動情報が持つ可能性が増大、健康・医療分野の情報集積に強みを持つ保険業界が、そうした「リアルデータ」を通じた事業創出を探り始めている。その中で、SOMPOホールディングスは傘下の介護事業などを軸に、データを社会の〝困りごと〟解決につなげるビジネスに挑む。その取り組みはバーチャルデータ活用で出遅れた日本の反転攻勢へのヒントもはらんでいる。

介護分野で先行 防災・農業との連携も

SOMPOホールディングスが狙うのは保険・介護事業を通じて蓄積したリアルデータを分析し、社会課題の解決につなげるソリューションビジネス。5000億円超の事業規模を目指す。①介護②防災・減災③モビリティー④農業⑤ヘルシーエイジング──を重点領域として、サービス提供基盤となる「リアルデータプラットフォーム(RDP)」を構築する構想だ。

先行するのは介護分野。傘下企業SOMPOケアを中心に業務の効率化やサービス向上の方策を考え「介護事業の品質と労務負担軽減に寄与する汎用アプリを確立し、介護版のアップストアを目指す」(平沼直樹データ戦略部長)。一部施設では既に取り組みをスタート。試験開発したアプリを実際に使いつつ課題を修正し、将来は外部に提供するロードマップを描く。

農業では米国で手掛ける農業保険と気象データを連携させる事業を開始。防災・減災でもシミュレーション技術を持つ米スタートアップと組んで研究を進めるなど「種まき」が加速してきた。

一連の戦略を加速・深化させるための体制整備も進む。2016年に創設したデジタル戦略部がグループ全体のデータ活用をけん引。米データ解析大手パランティア・テクノロジーズと資本業務提携し、細分化されたデータを統合し、業務プロセスで使える形にする同社の技術活用も探る。

「日本のビジネスは人に寄り添い、プロセスも細かい。この部分をリアルデータで可視化できればGAFAとは異なる土俵で戦える可能性もある」。的野仁SOMPOホールディングスデータ統括室長は戦略の将来に強い自信を見せている。 

安心・安全・健康のテーマパークが目標 


SOMPOホールディングス グループCSuO 執行役  下川亮子氏 
経営と社会貢献を別々に考えるのでなく、社会に良いことをしながら、いかに企業として成長するか。SOMPOホールディングスは常にそう意識しています。
 その一環として将来、世の中がどうなっているかを想定し、我々は何のために存在しているか、どういう存在でありたいかを議論し「〝安心・安全・健康のテーマパーク〟により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」という「SOMPOのパーパス」を策定しました。社外に対しては約束であり、社内的には目指すべき北極星のような位置づけです。
 そのテーマパーク構想を追求することがパーパスの実現そのものであるととらえています。人々が重要だと思っているのは「安心・安全・健康」。それに資するソリューション提供によってマネタイズする手段が、リアルデータを活用する「リアルデータプラットフォーム(RDP)」の構築です。
 それは自社に閉じたものでないことが重要です。例えば、介護の問題は日本全体でチャレンジすべき課題であり、私たちだけで解決はできません。同業他社を含めた協業ができればデータの精度が上がり、社会課題の迅速な解決にもつながる、という意味で「プラットフォーム」と呼んでいます。
 保険は万が一に備える「マイナスをゼロ」にするものだが、RDPによる予測で、その手前、万が一の起きる前の段階でのパートナーとなり、「ゼロをプラス」にする価値を生み出す存在になりたいと願っています。

活用なお途上 受け手のリテラシー進化も急務

日本総合研究所 シニアマネジャー 川崎真規氏  

日本の現状としてはまだリアルデータをうまく活用できる段階に来ていないとみている。理由としては、データの内容や質、データベースの構造といった「活用を仕掛ける側」=提供側の技術の観点に議論が偏りすぎていることが挙げられる。

現時点ではリアルデータ活用によるビジネスの「受け手」側の理解や解釈、つまり「リテラシー」が十分に進んでいないことが隘路(あいろ)になっているようだ。リアルデータに基づくビジネス課題のソリューションを示されたとき、それをうのみにせず、自分の生活様式や事業モデルにどう合わせて行動を決めるか。個人や企業といったミクロレベルでも議論を深めることが求められよう。

バーチャルからリアルへ データ活用、日本勢にも勝機


 IoTやAI(人工知能)の進化を背景としたDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速で、データのビジネス活用は新たな局面を迎えつつある。交流サイト(SNS)やウェブの検索ワードなどネット空間で生まれる「バーチャルデータ」をマーケティングなどに生かす取り組みが一般化した。次の主戦場として注目されているのが「リアルデータ」つまり現実社会で暮らし、働く人々の実際の行動から蓄積される情報で、潜在的なデータ量はバーチャルデータをしのぐ。
 そうした中、火災保険や自動車保険、生命保険などの事業はその特性として医療や健康、家計、さらには災害や事故まで膨大な情報の蓄積があり、保険業界はリアルデータを活用したビジネス開拓との親和性が高いといえる。特に高齢化社会をにらむ観点から健康関連分野のデータへの注目度は高く、国内では自治体と生命保険会社が地域医療や高齢者のヘルスケアのスマート化へ連携を探る例も出てきている。
 これまでバーチャルデータを中心とするデータビジネスではGAFAなど米IT(情報技術)大手が大きく先行していた。だが今後IoTやAIの発展に伴い、日本人が得意とするものづくりや「おもてなし」の分野で一段とDXが進めば、リアルデータ活用では日本企業にも勝機が生まれそうだ。

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