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懐かしい大阪 市民と記録 市立図書館「思い出」集め公開

時を刻む

大阪市立図書館が2013年度から、地域にかつてあった施設や光景などの思い出を記録として残す「思い出のこし」プロジェクトを続けている。市民から寄せられた思い出に職員が資料などを調べた情報を付け加えて館内で紹介。この3月からは二次利用がしやすいオープンデータとしてホームページでの公開も始めた。「文献には残りにくい地域情報もある。読んで楽しみ、活用してほしい」としている。

思い出のこしは13年度に住吉図書館で始まり、14年度から住之江図書館、16年度からは24区に1つずつある全図書館で実施している。館内に専用の用紙を置き、心に残っている思い出を、おおよその時期、記入者の生年とともに書き入れてもらってきた(現在は新型コロナウイルスの緊急事態宣言を受け休館中)。

なくなってしまった施設や光景、地元の人たちが呼んでいた愛称、子どもの頃に遊んでいた場所など、書く内容は何でもいい。昔、縁日など特定の日に開かれていた夜店にまつわる思い出などが寄せられている。

「表通り(現夕陽丘ストリート)では決まった日に夜店が開かれ……町の角には牛車が止まっていた」(天王寺区)、「阪神野田駅前のロータリーの公園では1、6、3、8がつく日に夜店が立ち、雑多なものが売られていた」(福島区)

小さな公園には、遊ぶ子どもらが使う愛称があった。「(北区の)中津のプリン公園に紙芝居のおじさんがいました」という思い出には「プリン公園は中津東公園の通称。大きなプリンのような遊具があることからこの名前で呼ばれているようです」などの補足情報が付けられている。

「御崎南公園は吉田池と呼ばれていた」(住之江区)という思い出には「かつてため池があったが、人口が増え、子どもたちの遊び場として活用するため公園として整備された」といった情報が、参考文献とともに記されている。

思い出のこしを始めたのは、現在、城東図書館長を務める相宗(あいそう)大督(だいすけ)さんだ。利用者から昔の地域の様子が分かる文献がないか尋ねられても、適当な資料がないことがあった。地域の歴史を記した資料には、風俗や流行、子どもたちの遊び、小さな店舗などは記されていないことが多い。

「思い出を記すという形なら地域史や学校史に載らない細かな情報も記録に残せると考えた。遊びや愛称などは比較的最近のものでも残りにくい」と語る。図書館員が補足・追加情報の調査をすることで地域に関する知識を増やせる効果も期待できるという。

これまでに各図書館に寄せられたり職員が聞き取ったりした思い出は、先行した住吉で約100件、住之江で約200件、その他の図書館で各20件ほど。そのうち約200件をホームページに掲載した。オープンデータにしているので、誰でもダウンロードできる。

オープンデータを活用して様々な活動をしている坂ノ下勝幸さんは地図に各図書館のアイコンを表示し、クリックすると思い出が出てくる「大阪思い出のこしマップ」をウェブ上に作成した。「興味深かったので閲覧しやすいように工夫してみた」と話す。

ホームページへの掲載を担当した市立中央図書館の外丸(とまる)須美乃さんは、最近、東住吉区にかつてあった映画館に関する思い出を利用者からの調査依頼への回答で参考情報として活用した。「寄せていただいた思い出を早速生かすことができた」と手応えを感じている。多くの人の思い出を集積すれば、変わり続ける街を重層的に記録することが可能になるかもしれない。(編集委員 堀田昇吾)

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