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移行促進こそ本分 資金循環を確立 中田誠司大和証券グループ本社社長CEO

脱炭素社会 創る

大和証券グループ本社は2030年までの温暖化ガス排出量実質ゼロ、50年までの投融資ポートフォリオの実質ゼロを目標に掲げる。再生可能エネルギーへの投資に加え、トランジションファイナンス(移行金融)やファンドを通じ、脱炭素社会の実現に向けた資金循環の確立をめざす。脱炭素は永続的かつ不可逆的なテーマだとして、中田誠司社長CEO(最高経営責任者)は「脱炭素社会への移行促進はまさに証券会社の本分だ」と力説する。

ESG投資、トップランナー自負

21年8月にカーボンニュートラル宣言を発表した。30年までの自社の温暖化ガス排出量ネットゼロ(スコープ1、スコープ2)、50年までの投融資ポートフォリオのネットゼロ(スコープ3)が目標だ。証券会社はトレーディングシステムなどで相応の電力を使う。10年度から毎年1%以上の二酸化炭素(CO2)排出量削減を続け、20年度の国内排出量は2万6097トン。10年度に比べ6割減った。

ネットゼロ達成の一環として21年度から本社ビルで使う電力を再生エネに切り替えた。入居するグラントウキョウノースタワー(東京・千代田)の賃貸人である三井不動産から、トラッキング付き非化石証書が付与された電力の供給を受けている。さらに21年7月からは子会社の大和エナジー・インフラ(同)が所有する再生エネ発電設備にトラッキング先を切り替えた。今後は全国にある営業店、データセンターなどにも再生エネを広げていきたい。

スコープ3のうち従業員の通勤や出張、リース資産である営業車のガソリン使用に伴う排出量は開示済みだ。投融資にかかる排出量は開示要請が非常に高まっているものの、残念ながら当社を含めて開示している大手金融機関はほとんどない。

投融資先に関与強める

50年までのネットゼロに向けた中間目標は23年度までに設定する。脱炭素は永続的で不可逆的な流れだ。それゆえ短絡的かつ拙速に動くのではなく、持続可能性のあるモニタリング管理手法や国際的な枠組みであるパリ協定と整合的な中間目標を検討する。とはいえ、できることからやろうと一部の投融資先については気候変動対策などESG(環境・社会・企業統治)の観点から関与を強めている。

当社はESGファイナンスのトップランナーとして市場拡大に努めてきた。08年に国内初の個人向けインパクトインベストメント債券を発行した。調達したお金を難病で苦しむ人のワクチンに使うワクチン債だ。

18年には住友林業のユーロ円建て転換社債型新株予約権付き社債(グリーンCB)の主幹事を務めた。21年1月には欧州復興開発銀行(EBRD)のグリーントランジションボンドをアレンジした。当社が主幹事を務め、21年4月に新規株式公開(IPO)した省エネ関連のテスホールディングスは、エネルギー・環境分野における日本初の「SDGs(持続可能な開発目標)―IPO」となった。

ESG・SDGsファイナンスのさらなる発展をめざし、21年10月には大和証券に「サステナビリティ・ソリューション推進部」を新設した。

投資家の行動にも変化

コロナ禍を機に個人投資家や機関投資家の関心が高まり、社会課題を意識した投資行動が広がっている。ESG関連の上場投資信託(ETF)の資金流入額は21年4~8月に8・8兆円に上り、すでに20年度を上回った。そうした状況に対応し、当社グループと米運用会社が共同出資する「グローバルXジャパン」は21年に、ESG関連のETFを3銘柄上場させた。

21年7月には大和アセットマネジメントが「脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称・カーボンZERO)」を設定した。ファンド内の個別銘柄のCO2排出量を算出し、それと同等のCO2削減が見込まれるグリーンプロジェクトに資金を拠出。ファンドとしてカーボンゼロをめざす。信託報酬の一部はNPO団体の植樹プロジェクトに寄付する。顧客の共感を得て非常に多くの資金が集まっている。

21年公表の「2030ビジョン」で、グリーンファイナンスやトランジションファイナンスの促進を掲げた。再生エネ市場、カーボンニュートラルへのトランジションファイナンスなどを含めると、マーケットは数十兆円、数百兆円と巨大。脱炭素社会への移行促進はまさに証券会社の本分だ。

戦略子会社、投資残高3000億円めざす


 大和エナジー・インフラは18年設立の戦略子会社だ。太陽光発電、地熱発電、バイオマス発電など再生エネ分野への投融資を手がける。21年9月末時点の投資残高は約1360億円。中長期で3000億円に増やす。
 リスクマネーを再生エネ分野に自ら供給し、投資ノウハウを蓄積。運用ノウハウも取得し、インカムゲインを拡大する。そのうえで投資家に金融商品として販売したり物件を売却したりする。「キャピタル・リサイクリングモデル」と呼ぶ新たな資金循環の確立をめざしている。
 20年4月には、北海道の岩見沢市と釧路市で同社が保有・運転する計3カ所のメガソーラー(大規模太陽光発電所)を対象に「北海道メガソーラー私募ファンド」(資産規模約50億円)を組成した。さらに同社の太陽光発電所が対象の「太陽光私募コアファンド」(同約730億円)も21年9月に組成。保有する太陽光の資産を金融商品に転換することで、年金基金や生命保険会社をはじめとする機関投資家に投資機会を提供する。
 調達した資金は太陽光発電など再生エネ分野に再投資する。大和証券グループ本社の中田誠司社長CEOは「こうした商品を将来は個人投資家にも提供し、資産形成の重要な選択肢の一つにしてもらいたい」と話す。
 再生エネ分野への取り組みは物件への投資だけではない。19年10月にはオランダのM&A(合併・買収)助言会社グリーン・ジラフ・アドバイザリーに子会社を通じて50%出資した。19年12月には大和エナジー・インフラが再生エネ分野の投資・運用を手がける独アキラ・キャピタル・ホールディングの株式も40%取得し、資本業務提携した。
 「グリーン・ジラフがかかわる売却案件などがあれば投資の検討対象になる。アキラ・キャピタルと当社のノウハウを融合させ、アジアを含む別の地域にも展開していきたい」。中田社長はこう話す。両社との関係を生かし、再生エネ分野で発電施設の開発やM&Aなどでビジネスを拡大する。
 大和エナジー・インフラは19年に英マンチェスター地域の配電を担う企業に関西電力、三菱UFJリースと共同で出資した。一から開発する案件よりは、既存インフラに投資することで安定したインカムゲインを得る狙いがある。太陽光、洋上風力など再生エネの発電施設を開発する事業者に、出口戦略の受け皿機能を提供することにもなる。グループを挙げて脱炭素社会実現へ円滑な資金循環を担う意向だという。

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