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「新しい自分」探る やりたいサッカーに力を注ぐ

「FWとして勝負していきたい」とカルタヘナの監督に告げると、彼も僕の意志を理解してくれた。それから1カ月がたった。僕の起用に変化はない。

好調を維持するチームの1トップは今季既に15得点を挙げている40歳のルベン・カストロ。途中から入る僕のポジションはサイドMFだけれど、ゴールを強く意識し、できるだけ高い位置でFWの感覚でプレーしている。

こんなふうに自分のことに集中し、自分のためにサッカーができることの喜びを味わっているのは本当に久しぶりだ。

欧州での僕は身体能力で劣る外国人選手という立場。しかし日本人だからこその、他のチームメートにはない強みもある。組織の一員としてタスクを遂行する力だ。味方がバランスを崩せばそれをカバーすることをいとわないし、守備をさぼることもしない。チームに足りないものをどうもたらすか。日本人が海外で、チームという組織で生き残るにはどうすればいいのか、ずっと悩み考え続けてきた。

僕の欧州での歩みを振り返ると、いつも同じことを繰り返してきたような気もする。献身性や運動量への評価はあっても、FWとして見てはもらえない。トップ下などMF的な起用はあっても、本職のMFにはかなわない。チームが勝てなくなれば真っ先に変更される。結局は居場所が確保できない不本意な現状にイライラや落胆が募り、「FWとして勝負したい」という気持ちが抑えきれなくなる。そういう経験を過去に何度もしてきた。

それに比べると今は、自分のやりたいことに集中できる毎日を楽に感じている。きっとこれは多くのチームメート(欧州や南米の選手)と同じ感覚なんだと思う。以前なら、そういうリラックスした状態は自分のためにならないと考えていた。「苦労は買ってでもしろ」というのを実践してきたタイプで、これもまた日本人的な思考かもしれない。

そう考えると、これまでの僕は必要以上に悩みすぎていたんじゃないのか、と思ったりもする。「日本人」ということへのこだわりが強すぎたのかもしれない。もっとシンプルに自分の武器、やりたいことだけに注力してもよかったのかもしれない。

後悔はない。悩み、考え抜いた時間があったからこそ、今の自分がいるのだし、こんなふうに考えられるんだと思う。けれど、これから先、欧州でプレーする日本人選手たちには、こんな思いをしてほしくないなという気持ちがある。

だからといって後輩たちに明確な答えを示すまでには至ってはいないのだけれど。

ポジションを争う40歳のストライカーの姿を見ていると僕の「これから」が楽しみになってくる。彼から学ぶことが多い日々の中から答えが見つかるかもしれない。

(カルタヘナ所属)

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満身創意(岡崎慎司)

サッカー元日本代表、岡崎慎司選手の連載です。FCカルタヘナでのこと、日本代表への思い、サッカー選手として日々感じていることを綴ったコラムです。

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