[社説]中国は深刻なコロナ感染実態の開示を - 日本経済新聞
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[社説]中国は深刻なコロナ感染実態の開示を

中国が新型コロナウイルス感染症を厳格に抑え込む「ゼロコロナ」政策を一足飛びに放棄したことで患者、死者の数が未曽有の規模に達している。感染実態が不透明なまま出国制限も緩和するため、各国とも独自の水際対策を迫られている。中国政府には世界的な混乱を抑えるため、まず国内の正確なデータを開示する義務がある。

岸田文雄首相は8日から中国からの渡航者に陰性証明の提示を義務付けると表明した。3年前、最初に新型コロナ感染症が見つかった中国からの入国者の感染が問題化し、東京五輪1年延期など日本経済は大打撃を受けた。

既に世界各地で中国からの渡航者の陽性率が高いという報告も出ている。一連の教訓を踏まえれば、現時点での日本政府の判断は妥当だ。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も「中国での感染が非常に多くなる一方、包括的データが出てこないため、各国が自国民を守るのに必要と信じる措置をとるのは理解できる」と語った。中国が実態を正確に開示しない以上、厳しい措置はやむを得ない。

中国外務省の報道官は「各国の防疫措置は科学的で適度であるべきだ」と日本の措置などに反発している。この言動には納得できない。科学的に対処しようにも中国自身が正確なデータを公開していないのである。

WHOの担当者は「新型コロナが原因の死亡と認定するのに、呼吸器系不全を要件としているのは定義が狭すぎる」と述べ、中国による実態の過少報告を問題視した。死亡ばかりではなく、中国内の感染動向まで不明なのは、行政の責任放棄に等しい。

これでは、中国に事業所や工場を持つ外資系企業も安心してビジネスを展開できない。それは厳しい状況にある中国経済のさらなる下押し要因になりうる。

14億人の人口を持つ中国の感染状況は、パンデミック(世界的大流行)終息の時期を左右する。それは今後の世界経済の行方にも大きく関係する。中国はWHOなど国際機関による現地調査などを受け入れるべきだ。同時にデータを積極開示しながら、国際的な共同研究にも踏み出す必要がある。

中国は2020年1月、湖北省武漢市での最初の感染症まん延を隠蔽した。そのことで世界各国の対応が後手に回ってしまった教訓を今度こそ生かすべきだ。

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