故・渡辺京二さん(日本近代史家) 名もなき人々追った筆
追想録
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歴史と社会を鋭くうがつ息長い活動の原点は1961年の随筆「小さきものの死」にある。旧制五高(現・熊本大)時代に結核療養所へ入った折の体験だ。
新たに入院してきた母娘の部屋から、夜、笑うような奇妙な泣き声がする。翌朝、看護師から2人とも亡くなったと聞いた。若き氏は死の淵にある母が娘の体をさするさまを想像し、震えた。「人はこのように死なねばならないことがある」
近代以前、庶民は自然や環境と共鳴しなが...
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