住友林業最高顧問 矢野龍(27)会長時代
社外人脈で見聞深める 優れた先輩経営者に脱帽
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11年間社長を務め、2010年の4月に会長になった。
住友林業の社長は毎年、年初の松の内のあいだに比叡山の日吉大社に行って1年間の山林の安全を祈願するのが習わしだ。その年の正月も、いつものように社務所から、身を切る寒さの中を小石を踏みつつ、500メートルほど歩いてひとり東本宮へ向かった。
バトンタッチを控え、ここへ来るのも最後かと感慨があった。まだ本人に伝えていなかったが、次期社長の市川晃君(現...

住友林業で社長、会長を歴任し、最高顧問を務める矢野龍さんは1940年、旧満州(現中国東北部)で生まれました。敗戦で山口県に引き揚げ、自由気ままに育った自然児で、高校も大学の入試も合格点すれすれだったといいます。縁あって公立の北九州大学外国語学部に入学し、実用英語を学んだことで住友林業が初めて募集した海外駐在員枠で採用されました。入社4年目、矢野さんは米シアトルの駐在員として北米大陸の森林地帯をヘリに乗り、水を得た魚のように飛び回ります。もっとも米国住友林業の責任者として2度目のシアトル駐在時には、現地で訴訟の当事者となり、辛酸をなめる経験もしました。大企業の経営者としては異色の道を歩み、人間味あふれる矢野さんが住友林業の未来までをつづった読みどころ十分の連載です。