/

波乱の漁業、買い負け対策急務 茨城がサバ養殖に挑戦

こだま

サバ、カツオ、メヒカリ――。茨城に住んで2年半、野菜や果物とともにおいしいと思うのが魚介類だ。2020年の海面漁業生産量は全国2位。サバの水揚げは1位だが、そんな水産県にも海を超えて様々なリスクが忍び寄る。直近ではウクライナ危機だ。

水産卸の茨城水産(水戸市)の担当者は「サケはロシア産の在庫があるが、今後本当に買えるのか。他国産には影響が出ている」と気をもむ。例えばノルウェー産。日本に空輸する飛行機がロシア上空を飛べず、ルート迂回や燃油高の影響で値上がり傾向だ。チリ産などでの代替も増え、サケの卸値は全般に平年より3~4割高いという。

ウニやカニでもロシアは重要な輸入元だ。「流氷による供給減が大きいと聞くが、ロシア産ウニの値段は平年の倍近い。水産物は全般に値上がりしている」。那珂湊おさかな市場(ひたちなか市)で鮮魚店を展開するヤマサ水産の役員はこう話す。

ただ水産品の品薄は今に始まった話ではない。茨城水産の担当者は「カニはもともと値上がりしすぎだった。米国の引き合いが強いのが大きい」と話す。コロナ禍に伴う世界的な金融緩和が株高などを招き、富裕層の購買意欲を刺激した面は見逃せない。

世界的なカネ余りと供給不安は原油高も加速させた。「燃料油のほか漁業用の網や発泡スチロールも値上がりした」(大洗町漁業協同組合)。円安も重なり、国内漁業の経営環境は厳しさを増す。

そんな中、茨城県は冷蔵倉庫大手のヨコレイと組み、マサバの養殖を22年度に始めると発表した。情報通信技術(ICT)を活用し、漁港のいけすで養殖する。サバの養殖は西日本で多く、湾や入り江が少ない茨城は不向きとされるが「海の状況に応じ、いけすの網を浮沈させるなどの新技術が登場したため挑戦する」(水産振興課)。

クロマグロやカニほどではないが、大衆魚のサバにも買い負けの懸念はくすぶる。日立市の鮮魚関係者は「輸入品のサバは平年比3~4割高い」と話す。缶詰大手ではサバ缶の値上げが相次ぐ。資源量や気候変動に影響されにくい漁業の育成は必要だ。

茨城ではないが、JR東日本水戸支社など3社は福島県浪江町の常磐線浪江駅でエビの養殖実験を始めた。地域振興と養殖の推進に向けた珍しい試みとして注目したい。

短期では流通・加工業者や量販店を含め、水産物の価格体系を見直す必要もあるだろう。一皿100円や200円の回転ずしを享受できる状況は長く続くだろうか。尊い海の幸が食卓から遠のく不幸を招かないよう、水産資源の価値を考え直したい。

(水戸支局長 竹蓋幸広)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン