中国電力、自由化軽視のツケ重く 社長・会長辞任
中国電力の企業向けの電力供給を巡るカルテル問題はトップ2人の引責辞任へと発展した。送配電子会社の中国電力ネットワーク(広島市)の顧客情報を不正閲覧していた問題と併せ、電力の自由化を軽視していた大きなツケが回ってきた格好だ。燃料費高騰による巨額の赤字に悩むなか、経営陣への株主代表訴訟に発展する可能性もあり、経営は依然難路が続く。

中国電は30日、滝本夏彦社長と清水希茂会長が引責辞任すると発表した。同日開いた臨時取締役会で決定した。6月開催の株主総会で退く。記者会見した滝本社長は「関係者の皆様に多大なるご心配やご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる」と陳謝した。後任には芦谷茂副社長が代表権を持つ会長に、中川賢剛常務執行役員が社長に就く。
企業向けの電力供給を巡るカルテル問題で、同日に公正取引委員会から独占禁止法違反(不当な取引制限)で707億円の課徴金納付命令を受領した。滝本社長は「独占禁止法への抵触を疑われてもやむを得ない面があった」と認めた。
中国電によると2017年11月、関西電力が中国電の管轄内での営業活動を開始後、安値による営業活動が激化。当時常務執行役員だった滝本社長が18年1月に関電側の担当者と面会し、「販売戦略上、どうしても(顧客を)取りたいという思いを伝えた」(滝本社長)という。
その後、部長職の社員らの間で管轄地域を越えて営業活動をしないことなどに合意し、同年11月から実施した。競争が制限されたことで顧客は高値で電力を購入していた可能性がある。
また公取委によると関電は中国電管内での官公庁入札に関して、1年間に供給する電力量が30万キロワット時未満の入札には参加しないことなどを中国電に伝達。それをもとに中国電は入札で高値の電気料金を提示していた。

一方、公取委の命令内容に対して滝本社長は「今後、命令内容を精査、確認して取り消し訴訟の提起を視野に入れる」とも話した。公取委がカルテルがあったと認定した営業範囲などの見解に相違があるという。
中国電は再発防止策として企業再生担当の取締役を設置。6月の株主総会で社外取締役を増員する。経営や営業活動に関わる社員に独禁法に関する定期的な研修も実施する。
中国電は22年4〜12月期の連結決算に特別損失として707億円を計上している。巨額の課徴金は経営に大きな打撃となり、23年3月期の連結最終損益は1740億円の赤字を見込む。
燃料費高騰を受けて規制料金の大幅引き上げを経済産業省に申請しているが、こちらも実施時期のめどは立っていない。送配電子会社が管理する顧客情報を社員が不正に閲覧していた問題も明らかになっており、消費者からの厳しい目は避けられない。