スズキ、22年の四輪生産11%増 2年連続プラス

スズキが30日発表した2022年の四輪車生産・販売・輸出統計(速報値)によると、世界生産は前年比11%増の317万2192台だった。プラスは2年連続。半導体不足の影響を、主力のインドで半導体使用が少ない車種を生産してカバーし回復につなげた。ただインド市場でのシェアは4割程度に低下。30日に93歳の誕生日を迎えた鈴木修相談役らが築いた先行優位を守れるか、実行力が問われる。
世界販売は296万8494台と7%増え、2年連続の増加となった。新型コロナウイルス禍の前の19年(生産は305万3392台、販売は300万6894台)との比較では、生産で12万台近く上回ったが、販売は国内などでの車両供給不足から約4万台及ばなかった。
生産についてみると、海外は前年比13%増の225万2301台だった。半導体を含む部品不足が続くなか、インドで中南米への輸出など向けに半導体使用の少ない車種を生産することにより台数を確保した。インド生産は15%増の191万6040台と過去最高となった。他の主要生産国ではインドネシアが11%増、ハンガリーが20%増だった。
国内生産も5%増の91万9891台と、4年ぶりにプラスに転じた。部品不足から相良工場(静岡県牧之原市)や湖西工場(同県湖西市)、磐田工場(同磐田市)でそれぞれ5〜6稼働日の終日操業停止があったが前年よりは少なく、年後半に回復基調を強めた。

販売は海外が10%増の236万5772台、国内が1%減の60万2722台だった。輸出は中南米向けなどが伸び、5%増の22万2995台と3年連続でプラスとなった。
生産や販売の回復基調を23年により確かにできるかは、半導体不足の克服がカギを握る。スズキは半導体を含む部品をサプライヤーに対し「2年分ぐらいを先読みして発注する」(鈴木俊宏社長)よう改めた。従来の発注量内示は半年分ほどだったというが、取引先の安定的な操業に配慮して供給確保につなげようと取り組む。
それでも半導体では「落ち着いたように見えて、デコミットメント(供給約束の見直し)が入ってくる状況がある」(鈴木社長)。22年12月の生産は国内が前年の低迷からの反動で増えたが、海外はインドも含め半導体不足が響き6カ月ぶりに減った。

販売てこ入れは急を要する。主要市場のインドでは累計販売台数が9日に2500万台を達成。だが最大手として5割超を握っていたシェアは直近4割ほどに下がった。人気上昇中の「多目的スポーツ車(SUV)の投入が遅れた」(鈴木社長)ことが要因だ。
そこで22年に自社生産のほか提携するトヨタ自動車とのOEM(相手先ブランドによる生産)相互供給も活用しSUVを拡充。23年に入っても12日に現地で「ジムニー5ドア」と「フロンクス」の2車種の投入を発表するなど、消費者へのアピールを欠かさない。
スズキは26日に発表した成長戦略で30年度の連結売上高を21年度の2倍の7兆円まで増やす目標を掲げ、まずインドでのシェア5割回復を目指す。それにはSUVの生産・販売を伸ばす必要があるが、半導体の安定調達がハードルとして待ち構えている。