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富士山噴火時、溶岩流避難は原則徒歩 渋滞避ける

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静岡、山梨、神奈川3県などがつくる富士山火山防災対策協議会は30日、噴火時の広域避難計画の中間報告をまとめた。避難の可能性がある住民は約80万人と想定。溶岩流からの避難は流れの遅さや道路が渋滞する懸念を踏まえ、原則徒歩とする。今後は東京を含むより広範囲の被害が予想される火山灰対策が課題となる。

広域避難計画の見直しは、被害想定を示したハザードマップ改定版(2021年3月)をもとに進めている。改定版では大規模噴火時の溶岩噴出量が従来想定の約2倍、溶岩流が到達する可能性のある市町村も15から27に増加。対象地域に暮らす住民は80万5627人にのぼる。

溶岩流が3時間以内に到達する地域に住み、噴火時に避難が必要なのは約11万6000人。従来想定の7倍に増えた。

避難対象者が大幅に増えるのを踏まえ、中間報告は深刻な道路渋滞が発生する可能性を指摘した。一般的に溶岩流は人が歩く速度より遅いとされ、自力での移動が難しい高齢者や障害者らを除き原則徒歩での避難を検討する方針を示した。

山梨県富士吉田市や静岡県の富士宮、富士、裾野市など8市町村は生命の危険が大きい火砕流、噴火の熱で積雪が解ける「融雪型火山泥流」の発生が想定される。対象地域で避難が必要な約5500人に対しては、噴火の予兆があった時点で車の利用を含め早期避難を促す。

火山灰が30センチメートル以上積もることが予想され、木造家屋が倒壊する恐れがあるのは23市町村にのぼる。対象地域では住民の避難先となる堅固な建物の確保を検討する。

静岡経済研究所(静岡市)の川島康明・研究部長は「富士山は300年間噴火しておらず、いつ起こっても不思議ではない」と強調。民間業者の対策を後押しするため「広域避難計画の早期改定が重要だ」と指摘する。

広域避難計画は市町村が個別に作成する地域防災計画の基礎になる。当初は21年度中の最終案策定を目指したが、高齢者ら要支援者や観光客の具体的な避難手順などの検討が間に合わず中間報告にとどまった。協議会は22年度中の決定へ作業を急ぐ。市町村は中間報告をもとに計画づくりに着手する。

富士宮市の担当者は「要支援者の避難について具体的な手順や方法を詳しく考える必要性が示された。リスクのある地域の高齢者施設や要支援者数の把握などを急ぎたい」と話す。

富士吉田市の市立病院も最新のハザードマップに基づき昼間、夜間、休日の場合に分けて避難計画づくりを進めている。車での避難が要支援者に限定されても、近隣に高齢者や障害者の施設があり、一斉に逃げれば渋滞する恐れはある。

市の避難計画も見直しが必要で、病院の担当者は「具体的な避難場所などを示してもらわないとルートの検討も難しい」とこぼす。

山梨大地域防災・マネジメント研究センターの鈴木猛康教授は「要支援者についての具体的なサポート体制が整っていない自治体は多い。国、県、市町村、民間事業者の役割を明確にした避難計画が必要だ」と指摘する。

静岡県の川勝平太知事は30日、記者団に対し「徒歩で安全に移動する避難訓練が必要で、これまでの車による訓練と様相が違ってくる」と強調。中間報告を自治会などに周知する考えを示した。火山灰に関し「広い範囲で影響するため神奈川、山梨両県とどう対処すべきかが今後の課題だ」との考えも示した。

富士山噴火への対策は、政府の防災対策実行会議のワーキンググループも検討を進めている。20年の報告書では東京都心で2~10センチメートルの灰が積もり、道路や空港、農地などのほか送電にも影響が出ると想定。噴火時に周辺地域のインフラや経済活動を守る対策づくりが急務となっている。

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