/

ボート型の農薬散布機じわり 秋田県横手市の農家手作り

農業は雑草との戦いの歴史でもある。イネの生育を阻まないよう、効果的に適量の農薬散布に取り組んでいる農家は多い。だが人力となると重労働だ。価格を抑えて作業の負担を減らそうと、農家が手作りで開発したボート型散布機が、コメどころの秋田県からじわり広がっている。

県南部の横手市郊外で5月25日、エンジン音が鳴り響いた。ボート型の機械が除草剤を散布しながら、30アールほどの広さの水田を疾走する。あぜ道で操作するのはM-FACTORY(エム・ファクトリー、横手市)の武藤吉喜代表だ。この散布機の開発者でもある。

水田は縦100メートル、横30メートルほどの長方形。県農地中間管理機構を通じ借りた。水を張った田んぼを歩き一人で散布すれば30分はかかる。だがこの広さなら「機械が縦に2往復すれば除草剤はほぼ一面に行き渡る」と武藤代表。散布に要した時間はわずか3分ほどだ。

散布機は長さ120センチ、幅55センチほどで、重さは約10キログラムと小型。土台となるガラス繊維に樹脂を塗り合わせた繊維強化プラスチック(FRP)を船体に使い、耐水性や耐衝撃性、軽さを実現した。

武藤代表は農家の4代目で春から秋は農業、冬場は除雪作業を請け負う。子どもの頃から機械いじりが好きで、自身の農作業をはじめ農家の負担を減らそうと約7年前に開発を始めた。

散布機は草刈り機のエンジンを代用し、部品もホームセンターで購入して作る。操作するコントローラーも市販品。農作業の合間にベースとなる部品を作り置きし、注文があると組み立てて早ければ翌日にも発送する。

武藤代表はその狙いを「家族経営でも買えるように価格を安く抑える。同時に、購入した農家が自分で修理できるようにするため」と説明する。

農業は高齢化や後継者難に直面し、農地の集約が進む。栽培面積が広がれば人力で農薬を散布するのは限界がある。ドローン(小型無人機)も使われるが、価格が高く技能認定書も必要になるなど事前準備は煩雑だ。

畜産業のマルケンファーム(横手市)は2018年にこのボート型散布機を購入した。肉牛約300頭を肥育し、エサの飼料米を水田30ヘクタールで栽培する。従業員の瀬谷育夫さんは重機や農機の操作にたけ、ボート型散布機の操作を一手に担う。

作業ではいっときに除草剤など農薬を散布するわけではない。だが操作に慣れれば「1日30ヘクタールも可能」と瀬谷さん。「散布にかかる労力を減らし、時間を短縮できるのが何よりのメリット」と指摘する。

価格は標準型が30万円程度と農機メーカーなどの製品に比べ割安だ。口コミやネット販売で次第に県外にも浸透してきた。年間販売台数も20台程度から、23年には100台を目指す。そのための下準備はすでに整えている。

(磯貝守也)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン