香川の野菜生産企業が低温物流拠点を建設、海外輸出強化

レタスなど野菜生産事業者の大平やさい(香川県観音寺市)は、農産物の集出荷貯蔵施設を同市内に建設した。短時間で冷却可能な真空予冷装置などを設置し、収穫した野菜の鮮度を長期間維持する。中小企業が本格的なコールドチェーン(低温物流)システムを整備するのは珍しく、大手外食・小売りチェーンへの販売や海外輸出を強化する。
本社隣接地に建設した施設は敷地面積が約4500平方メートル、建屋の床面積は約1400平方メートル。主要な機器の1つが真空予冷装置で、セ氏28度から同5度まで短時間で冷却可能。パレットと呼ぶケースに入れた野菜約3㌧まで対応できる。建屋は27日に完成し、4月に稼働させる。

野菜は収穫後、時間がたつと組織が分解するなど傷みやすくなる。鮮度を維持するには短時間で冷やす必要があり、真空予冷装置を設置した。長期の輸送になる海外輸出でも鮮度の高い野菜の安定供給につながる。
同施設はこのほか、スイートコーンやロメインレタス、結球レタスなどを保管する原料冷蔵庫、パック済みの生鮮野菜用の製品冷蔵庫を備えている。
またトラックに出荷する際、外気が入りにくい構造の出庫システムも設置した。高床式になっており、トラックの荷台に商品をスムーズに積載することができる。従業員の入り口にはエアシャワー室があり、衛生管理も強化している。
同社の大平尚志代表取締役は親元で就農した後、規模を拡大して優秀な人材を確保するために法人化を決断、2014年に株式会社を設立した。自社の農地は約110アール、借り受けしている農地が2100アール。年間売上高は約4億円。
大規模なコールドチェーンシステムは農協や卸売事業者、食品会社などが導入しているが、中小の農業生産企業が整備するのは珍しいという。総事業費は約3億8千万円。農林中央金庫と日本政策金融公庫が連携して資金支援した。
主要な取引先は大手の外食チェーンや会員制小売りチェーン、コンビニチェーンなど。また世界基準の農業認証「グローバルGAP」を取得し、21年には海外輸出を始め、シンガポールや香港に供給している。22年度の輸出額は約800万円の見込みだが、さらに海外市場を開拓して24年度には2200万円に増額する目標を掲げている。

大平代表取締役は「大手と取引する以上、衛生管理やコールドチェーンが望まれるため投資が必要。強みとして他にはない高品質の商品の提供を目指していく」と話している。
香川県は県土面積が小さいが、レタスは全国有数の産地になっている。農林水産省の野菜生産出荷統計によると、21年産の冬レタスの収穫量は1万2700㌧で、都道府県別で全国6位。鮮度維持での商品供給が増えれば香川県産野菜のブランド力の向上にもつながる。
(竹内雅人)