横浜市予算案1.9兆円 「3つのゼロ」関連盛らず

横浜市は28日、一般会計の総額が1兆9749億円となる2022年度予算案を発表した。21年度比で1.6%減だが、新型コロナウイルス対策の関連費用が前年度に続き1割超を占め、2兆円に迫る規模となった。昨年就任した山中竹春市長の初の予算編成だが、公約である子供の医療費ゼロなど「3つのゼロ」関連の予算計上は見送った。
山中市長は28日の記者会見で「喫緊の課題であるコロナ対策と市内経済の再生にまず注力した。選ばれる街を目指し教育、子育て支援にも重点を置いている」と話した。
一方、自身が重要政策と掲げる75歳以上の敬老パス自己負担ゼロ、子供の医療費ゼロ、出産費用ゼロの「3つのゼロ」と中学校給食の全員実施についての予算化は見送った。山中市長は庁内に横断的な検討体制を整えるとし「公約実現には財源も必要。財政健全化との両立をはかりつつ、任期4年の中で実現への道筋を示したい」と話した。
新型コロナ対策関連には前年度比15%減の2041億円を計上した。事業環境の厳しい中小企業向けの制度融資による資金繰り支援などに1473億円を投じる。このうち制度融資の預託金は1428億円に上り、それ以外のコロナ対策関連費は613億円で前年度の489億円を上回る。ワクチン接種に323億円、自宅療養者支援に17億円を盛り込んだ。

誘致を撤回したカジノを含む統合型リゾート(IR)に代わる施策「次の横浜を創る政策プロジェクト」の予算は5000万円で、将来の経済成長に向けた政策を検討する。観光地域づくり法人(DMO)を中心とした体制構築など、観光・MICE(国際会議や展示会など)の推進に44億円、山下ふ頭用地の造成などに24億円を計上。27年開催を目指す「国際園芸博覧会(花博)」関連では、会場となる上瀬谷通信施設跡地(旭区・瀬谷区)の土地利用推進などに59億円が予算化された。
脱炭素社会の推進に向けては、臨海部の技術革新支援や電気自動車の充電器設置補助の拡充など「ゼロカーボンヨコハマ」の実現に69億円を計上。市役所業務などのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進には119億円を盛り込んだ。
市税収入は21年度当初予算から6%増の8458億円を見込む。21年度はコロナ禍の影響により落ち込むとみていたが、好調な海外経済にけん引され企業収益や雇用が堅調に推移し、市税収入への影響は限定的だったという。共働き世帯や高齢者雇用などが増えたことも市税収入を押し上げ、3年ぶりの増収となる。一方、他の自治体へのふるさと納税による減収額は過去最多の203億円(21年度は171億円)を見込んでいる。
現在、市の財政は財源不足を補うため減債基金を200億円取り崩すなど臨時財源に依存している。山中市長は記者会見で「すぐに市政が立ちゆかなくなるという状況ではないが、いま行動しないと近い将来確実に財政破綻に向かっていく可能性がある」と強調。1000以上の事業を見直し、経費節減などで88億円を捻出する。ただ、見直しによる財源確保は20年度比で5割程度の水準にとどまった。
22年1月1日時点の横浜市の推計人口が戦後初めて前年比で減少に転じるなど少子高齢化が顕著で、22年度を歳出改革元年と位置づけ財政健全化のため今後10年程度を見据えた行政運営の基本方針や、次期中期計画を22年度中に策定する方針だ。