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需要読めず負担重く 横浜市の「上瀬谷ライン」暗雲

横浜市が米軍上瀬谷通信施設跡地(旭区・瀬谷区)に建設を計画している新交通システム「上瀬谷ライン」(仮称)に暗雲が垂れこめている。開業後の乗客需要が見通せないことや費用負担の大きさを理由に、市の第三セクターの横浜シーサイドラインが事業参画見送りを決定。市は早急な計画見直しを迫られる。

「年内の運行事業者の決定は大変厳しくなった。どういった交通体制をつくるか至急検討したい」。横浜シーサイドラインが市に「不参画」を回答した翌日の11月26日、山中竹春市長は定例記者会見でこう話した。

同跡地は相鉄線瀬谷駅から約2キロメートル北にあり、広さは約242ヘクタール。2015年に米軍から返還された。市はその一部の約100ヘクタールで、27年に有料来場者1000万人を見込む「国際園芸博覧会(花博)」の開催と、花博後に年間1500万人が来場するテーマパークの開発を計画している。

市は瀬谷駅と同跡地を結ぶ交通機関として全自動無人運転の新交通システム「上瀬谷ライン」の整備を計画。今年9月、すでに同様の新交通システム「金沢シーサイドライン」を運行している横浜シーサイドラインに、事業参画を依頼していた。

同社は外部の有識者を加えた検討会議を11月までに3回開催し、検討を重ねてきた。そこで懸念事項として挙がったのは、上瀬谷ラインの事業継続性と採算性だ。

上瀬谷ラインは営業路線2.2キロメートルで途中駅がなく、延伸なども計画されていない。需要のほとんどを将来開発するテーマパークに依存することになるが、肝心のテーマパークの具体的な事業計画は提示されていない。

当初は相鉄ホールディングスが地権者らに東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)のような大型テーマパークの開発を提案していたが、新型コロナウイルス禍などを受け、今年に入り同社は開発を断念した。

6月、三菱地所が跡地開発の「検討パートナー」となり、食や宿泊施設を含む自然体験型のテーマパークのコンセプトを打ち出した。ただ、実際の運営事業者や具体的な事業計画は明らかになっていない。

市がうたう「年間来場者1500万人」の実現性は不透明で、上瀬谷ラインの正確な需要予測も立っていない。このため横浜シーサイドラインでは「具体的なテーマパークの事業計画を見てから参画の可否を判断すべきだ」と結論づけた。

整備費用も重荷だ。市が試算する新交通システムの事業費は640億~680億円で、運行事業者はそのうち320億~340億円負担する見通し。横浜シーサイドラインは「多額の借入金、資金ショート、債務超過の発生などで事業単体で採算性が見込めない」と指摘。「金沢シーサイドラインもあり、市の外郭団体として健全な経営が必要」と慎重な姿勢だ。

市は年内に上瀬谷ラインの運行事業者を決定し、今年度中に運行事業者による国土交通省への許可申請を目指していた。山中市長は「花博開催に影響がないようにしたい」と語るが、建設が遅れるのは確実な情勢だ。

ただ、横浜シーサイドラインは事業参画を再検討する可能性にも言及している。その場合の条件として同社は、テーマパークの具体的な計画や新交通システムの延伸計画、テーマパークが撤退した場合や感染症流行時などのリスク回避策の提示、テーマパークを建設するコンソーシアム(共同企業体)からの出資、適切な工事期間や整備事業費などを挙げている。同社の三上章彦社長は「早急に事業計画の見直しをすべきだ」と話しており、今後の参画に含みを持たせた。

市は代替の交通手段も含めて検討するとしたが、工事期間なども考えると花博に間に合わせるためには残された時間は少ない。

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