子育て世帯支援重点 横浜市の23年度予算案1.9兆円

横浜市は27日、一般会計の総額が1兆9022億円となる2023年度予算案を発表した。子育て支援を最重要課題と位置づけ、子育て・教育関連予算は22年度当初予算比3%増の6296億円とした。市の人口は2年連続で減少しており、支援を手厚くすることで子育て世帯の呼び込みを目指す。
山中竹春市長は27日の記者会見で「子育てしたいまち、次世代をともに育むまちを基本戦略に、子育て世帯が求めていることを調査して取り組む」と強調した。

山中市長の主要公約の一つである小児医療費助成の拡充には111億円を盛り込んだ。現在は所得制限や年齢に応じた負担金が設定されているが、8月にも制限を撤廃して全額を助成する。中学3年生までの医療費が無償となる。
同じく公約に掲げた出産費用については、市内の出産費用の調査費として1500万円を計上した。山中市長は「今年度実施した子育て世帯への調査で、妊娠出産へのサポートのニーズが大きかった。まずは正確な出産費用の把握に努める」とした。
待機児童や保留児童の解消に向け、保育園や幼稚園の受け入れ枠確保に1648億円をあて、1〜2歳児を中心に受け入れ枠を1295人分追加する。新たに出産した家庭が一時預かりを無料で利用できる電子クーポンの配布なども始める。
日常的に医療援助が必要な「医療的ケア児」の受け入れをできる保育園を新たに12園認定するほか、病児保育の事業所を2カ所増やして計27カ所とするなど共働きの家庭が子育てしやすい環境整備に注力する。子育て世帯を含む生産年齢人口の流入を目指し、省エネ性能の高い住宅100戸を対象にした最大100万円を補助するモデル事業などマイホーム購入支援も行う。
中学校の全員給食実現に向けて58億円をあてる。前年度から約13億円増やして配膳室の設計・工事を進める。22年末時点で28%の喫食率を36%に上げると見込み、事業者に対する委託料も増額する。26年度からのデリバリー方式による全員給食を目指す。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進には163億円を計上した。受付件数が多い上位100の手続きを中心に行政手続きのオンライン化を進める。子育てに関する申請手続きをスマートフォンでできるようにする「子育て応援サイト(仮称)」の一部運用を来年度から始める。
アフターコロナに向けた経済活性化策としては、観光MICE(国際会議や展示会)振興を強化する。大規模スポーツ大会の開催やイベントを活用した市街地の回遊促進などの事業に7億1100万円、MICEの誘致支援に3億7700万円をそれぞれ盛り込んだ。
歩行者デッキや旧横浜文化体育館跡地(中区)に建設中の多目的アリーナなど、関内・関外地区の活性化には30億円を計上した。山下ふ頭の再開発関連では「再開発検討委員会」の設置などに4500万円をあてる。開園から70年以上経過した野毛山動物園(西区)のリニューアルも始め、計画策定や休憩施設など先行整備で3億3500万円を盛り込んだ。
75歳以上無料化を公約とした敬老パスに関しては、ICカード化による利用実績の調査を進め、敬老パス制度を含めた持続可能な総合移動サービスの検討調査の費用として2億6400万円を計上するにとどめた。
市税収入は2022年度当初予算比で2.1%増の8639億円と過去最高額を見込む。新型コロナウイルス禍の影響が和らぎ、雇用が回復したことで個人市民税が伸びたほか、家屋の新増築が増えて固定資産税も増加する見通しだ。税収が堅調に増加したため、市債活用額は同15.6%減の1148億円に抑える。
一方で、他自治体へのふるさと納税による減収額は過去最多だった22年度の222億円を大幅に上回る269億円を見込んでいる。
懸案の財政健全化に向けては歳出の見直しを進めた。23年度予算編成時には臨時財源である減債基金の活用200億円を含め400億円の収支不足があったが、市立保育所の民間への移管や市民の芸術参加を促す事業の廃止など恒常的な歳出削減と新たな歳入確保により24億円の財源を創出。保有資産の売却や外郭団体の解散・合併なども合わせて計232億円を収支不足解消にあてる。
その結果、減債基金の活用は170億円に抑え、22年度当初予算比で30億円減らす。22年に策定した25年度までの中期計画では、今後2年の減債基金の活用は各年度150億円に抑えるとしている。
中期計画では収支不足が3年で1000億円となるとしていたが、予算案編成後の見通しでは2年で860億円の収支不足となるという。山中市長は「計画通り進んでいる。新たな財源確保のため専任チームを設置するなど体制強化し、24年度以降は60〜70億円の財源を創出する」と述べた。