フューチャーノート、米ぬか飼料のコオロギ生産へ研究
食の普及を目指すFUTURENAUT(フューチャーノート、群馬県高崎市)は、自社で飼育する食用コオロギの飼料に米ぬかを使う研究を始めた。米穀卸のナカリ(宮城県加美町)が提供する米ぬかを使い、国産の食用コオロギの生産に向けて動き出した。6月には食用コオロギの新ブランド設立を目指している。

フューチャーノートは高崎経済大学発スタートアップで、2019年に創業した。コオロギは畜産による食肉の生産に比べて環境負荷が小さく、タンパク質やミネラルなどの栄養も豊富で、将来の食料不足の解決策になりうるとして注目を集める。雑食性のため、人間や家畜の食料以外を飼料にする研究が進んでいる。
ナカリとの共同研究は22年6月から始めた。コオロギは生育に適した温度のセ氏25〜30度の環境下で飼料と水を与えると、40〜45日で成虫になり収穫できる。飼料は大豆やトウモロコシ、魚粉などが中心だが、共同研究では飼料の一部を米ぬかに置き換えて飼育する。
両社は、米ぬかを飼料にするメリットは大きいとみる。まずは味だ。魚粉が多いと生臭さが強くなってしまうというが、米ぬかを入れることで風味が向上し、食べやすくなったという。フューチャーノートの桜井蓮社長は「ナッツのような香ばしさがあり、くせがなく食べやすい」と話す。
最高技術責任者(CTO)を務める高崎経大の飯島明宏教授は「米ぬかは人間の食料と競合していない」と指摘する。同社はかねて食品ロスを飼料にする研究もしていたが、「食品ロスが出る前提で考えていいものではない」(同教授)という。
輸入に頼る大豆やトウモロコシなどの飼料は、物価高や円安で価格が上昇している。自給率の高いコメから出る米ぬかを飼料にできれば、輸入飼料の価格変動の影響を受けにくくなる。「ゆくゆくは日本の食料自給率の改善にも貢献できるのでは」と飯島教授は期待を寄せる。
ナカリは全国から年間約5万トンのコメを調達し、精米で出る米ぬかの量は少なくとも年間6000トンだという。桜井社長は「(米ぬかを飼料にした)コオロギの生産量を増やしていく場合にも、十分対応できるポテンシャルがある」と話す。
ナカリは今後、自社でも食用コオロギの生産に着手する考え。同社の星忠吉・統括本部長は「高齢化が進む地元の産業として育てれば、地域は活性化し食料問題解決にも貢献できる」と力を込める。

フューチャーノートはすでに「米ぬかコオロギ」を前橋市内の虫をテーマにしたカフェに卸しており、1月から焼菓子として販売している。6月には食用コオロギの新ブランド「Brancket(ブランケット)」を立ち上げ、新ブランドでの商品化を目指す。
今後は、コオロギのフンを肥料に育てたコメから出る米ぬかをコオロギの飼料にする計画。持続可能な資源循環が実現できるかどうかを検証する研究も進める考えだ。
(田原悠太郎)