データ分析で歩留まり改善 金沢機工が工場向けソフト
機械工具商社の金沢機工(金沢市)は生産機器の稼働データを人工知能(AI)で分析し、製品の歩留まり改善を支援するソフトを開発した。機器の加工精度に影響を与える気象データに着目、天気予報を活用して機器を微調整できるようにし、不良品を減らす。データの分析・活用により製造業が抱える課題を解決する取り組みの一環としている。

同社は2021年、生産機器の不具合の予防診断をするソフト「機工報」を開発した。機器の温度や回転数といった膨大な稼働データを10分から1日の単位に圧縮し、特徴が分かるグラフに可視化。通常のデータからはみ出た「外れ値」を検出し、故障前の保全に役立てる仕組みだ。

このデータ分析のノウハウを応用したのが、今回の歩留まり改善のソフトだ。プロトタイプをつくり、まず、大型の切削加工機を使う石川県内のメーカーで実証実験を始めた。このメーカーでは加工機の背骨の金属部分が稼働時に0.1ミリメートル程度ゆがむことがあり、加工精度に影響が出ていた。ゆがみは気温によって変動するとみられていた。
金沢機工が稼働データを分析した結果、気温が低いほどゆがみが大きいことが判明。半年間の気温データをもとにゆがみを予測するAIモデルを構築した。オープンデータである天気予報からゆがみの発生を予測し、切削加工機に補正をかけることで加工精度の向上を狙う。

金沢機工の担当者は「現状では気温の違いによって予測精度にばらつきがある。データを蓄積することで精度を高めていきたい」としている。同様に生産機器を使う他のメーカーに対してもソフトの導入を働きかける。
機器の稼働データの取り方や、気温以外でもどのようなオープンデータと組み合わせるのが最適かなど顧客ごとにきめ細かく対応する。価格は導入対象の設備によって異なる。
同社は1946年創業で、22年3月期の売上高は約70億円。「ものづくりソリューションカンパニー」を掲げており、データ分析により製造業の課題解決につながるソフトの開発・販売を積極化している。予防診断ソフトの1カ月無料キャンペーンを始めるなど、顧客掘り起こしに取り組む。
高齢化や人口減少の影響で、中小規模の製造業を中心にベテラン技術者の不足に悩む企業は多い。不良品の発生予知ができれば生産性の低下を防ぐことにつながる。金沢機工は歩留まり改善のニーズは今後さらに高まるとみており、新たなソフトの販売に力を入れる。
(石黒和宏)