下水道の維持補修ロボット 石川の北菱、地上から操作
Tech&Unique
下水道の老朽化が全国的に課題となるなか、維持管理の重要さが増している。中に人が入ることができない管の補修工事では、維持補修用のロボットが欠かせない。建設機械部品が主力の北菱(石川県小松市)は30年以上前から同ロボットを手がける草分け的なメーカーだ。

マンホールから下水道の本管にカメラと維持補修用のロボットをおろす。地上からカメラで状況を確認しながら、ロボットを操作し、異物を削っていく。管をきれいにした後で更生材料となる樹脂を覆っていくが、本管と家庭用配管との接続部分まで塞がれてしまう。不要な樹脂を取り除く作業でも、このロボットが活躍する。
15センチメートルの狭い管でも対応できる。本体の重さは25キログラムで、1人で持つことができる。最大の売りは先端のヘッド部分が360度回転できる点。異物がどこにあっても取り除くことができる。空気圧と電気で動くため、環境負荷が少ない。価格は操作盤なども含めて、おおむね650万円だ。
下水管は使っていくと、さまざまな異物がたまっていく。「建設現場で使ったモルタルが下水に流れ込んで固まって堆積する。温泉街の場合、温泉の成分が固まってこびりつくこともある。街路樹の根が管を突き破って入り込むことも多い」。ロボットを担当する宗方航也次長は説明する。
1950年、自動車販売修理業として創業。その後、建設機械の部品の製造を開始した。下水道維持管理ロボットの商品化は84年。建設会社などから「細い下水管にモノが詰まって困るので、機械をつくれないか」という相談があったのが開発のきっかけになったという。
下水道調査用のカメラを手掛ける会社は多いが、異物の除去など実際に工事をするロボットは国内ではほとんどない。同社の販売台数は年10台程度だが、下水道の更生工事の需要は高まるとみている。国際協力機構(JICA)の事業採択を受け、マレーシアへの輸出を検討するなど海外展開も模索する。
北菱の2020年9月期の売上高は23億円。建設機械部品の製造の下請けが主力だ。谷口直樹社長は「下水のロボットといえば北菱といわれるようにしたい」と強調。自社ブランドのロボットの販路拡大に力を入れる考えだ。
(石黒和宏)
関連企業・業界