東京都、防災・減災対策に15兆円 40年代までに

東京都は23日、2040年代までの防災・減災対策「TOKYO強靱(きょうじん)化プロジェクト」を公表した。最新の気候変動や地震被害想定を織り込み、大雨に備えた調節池の整備推進などを盛り込んだ。総事業費は概算で15兆円を見込む。大規模な災害が発生しても首都機能や経済活動を維持できる都市づくりを目指す。
気候変動で予測される気温上昇や降雨量の増加のほか、都が5月に見直した首都直下地震の被害想定を踏まえて策定した。風水害の頻発や地震による被害、未知の感染症の拡大などに備え、長期にわたり継続して取り組む事業を例示。災害対策基本法にもとづいて策定する「地域防災計画」と異なり、インフラ面などの備えに軸足を置いた。
風水害、地震、火山噴火、電力・通信の途絶、感染症を5つの「危機」と位置づけ、これらが併発する複合災害とあわせて被害を最小限に抑えることを目指す。都や国の財源を活用し、地震対策に9.5兆円、風水害には6.6兆円を充てる。まずは23年度からの10年間で6兆円を投じる計画だ。

地震対策では首都直下地震で想定される約6000人の死者数を減らすため、木造住宅の耐震化の支援を拡充する。防災拠点となっている立川市や臨海部で、被災者への物資搬送などのルート確保に向けた道路の早期整備を促す。
風水害対策では地球温暖化で降雨量が増加し、海面が2100年までに最大60センチメートル上昇するとの最新の予測に対応する。雨水や川の水を一時的にためる調節池を30年までに150万立方メートル分新たに整備する現行計画を前倒しし、洪水を防ぐ。

富士山噴火による大量の降灰に備え、浄水処理施設の屋内化など生活インフラの保全に取り組む。電力・通信の途絶対策として太陽光発電設備の導入、感染症対策ではオフィス以外の働く場として屋外の公共空間の整備を進める。
小池百合子知事は23日の記者会見で「大規模な風水害、地震、火山の噴火、新たな感染症の流行などいつ起きてもおかしくない」と指摘。「災害が起きても都民の命と暮らしを守り、壊滅的な被害を防がねばならない」とプロジェクトの意義を強調した。災害リスクに強い都市づくりで国内外から投資を呼びこむ狙いもある。
都は22年5月、すべての関係部局を集めた「都市強靱化プロジェクト推進会議」を開催し、施策を協議してきた。11月には臨海部の防潮堤のかさ上げなどの計画を先行して発表した。