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比内地鶏業者、長引く苦境 カギ握る加工品の販路

東北6県 気になる現場

秋田県のブランド地鶏、比内地鶏に携わる事業者の苦境が続いている。首都圏の飲食店など県外消費が6割を占めており、新型コロナウイルス禍に伴う休業が響き在庫が積み上がった。県や市の消費拡大策でいったん減ったが、再び増えている。事業者はなお生産調整を強いられている。

新米が店頭に並び始め、郷土料理「きりたんぽ鍋」の季節を迎える。欠かせない食材が比内地鶏で、鹿児島県のさつま地鶏や愛知県の名古屋コーチンと並ぶブランド地鶏の代表格だ。

だがコロナ禍が生産現場に影を落とす。比内地鶏は2016年の51万羽を底に19年には55万1000羽まで回復した。ところが、20年は飲食店の需要が激減。在庫が積み上がったため生産調整を迫られ、前年比12.7%減の48万1000羽まで落ち込んだ。

大館市の山あいの比内地区。JAあきた北比内地鶏生産部会の高橋浩司部会長の養鶏場を訪ねた。ハウスでは平飼いする幼鳥や成鳥が元気に歩き回る。

より味がよいとされる雌の飼育期間は150日以上と決められている。一般的な鶏肉用のブロイラーに比べれば3倍強だ。肉は赤みが強く弾力がある。冷涼な気候で育ち皮は厚めで脂も甘い。

「生産現場は厳しい」。高橋さんはこう打ち明ける。年間約1万2000羽を出荷できるが、生産調整で飼育数を一時4割減らさざるを得なかった。現在は2割減の同1万羽という状況だ。

ひなを生産し、JAを通じ高橋さんら生産者に供給する黎明舎種鶏場(大館市)も環境は厳しい。親になる雌雄の種鶏(しゅけい)を複数の群れで飼い、雌が産んだ有精卵をふ化させている。

ピーク時の07年には年間59万羽を出荷したが、その後は減少傾向が続く。20年の出荷数は前年より約9万羽少ない17万6000羽だった。コスト削減のため、鶏舎を3棟から2棟に減らした。

集荷や加工、販売を担う事業者も業界を支える大黒柱だ。その最大手が本家比内地鶏(大館市)で、取引先からの情報をもとに先々どれだけ販売量を確保すべきかを見通す司令塔役でもある。

同社では売り上げの5割を居酒屋や焼鳥店など飲食店が占めてきた。だがコロナ禍で一変、需要のほとんどが蒸発した。どうすれば状況を変えられるか。阿部健二専務は様々な考えを巡らす。

方向性の一つが巣ごもり需要に対応した加工品の販売強化だ。「他業種と連携し、いかに消費者とつながるパイプを確保するか」。比内地鶏の今後を左右するとみる。

生き残りをかけた産地間競争は激しさを増している。コロナ禍を奇貨として、ブランド力が低下していないか見つめ直す時にある。生産者の高齢化は進んでいる。地元消費者も買い支える気概を持たねば、比内地鶏のあすはおぼつかない。

(秋田支局長 磯貝守也)

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