能登ヒバの楽器が続々 バイオリンやエレキ、周辺機器も
石川県の能登ヒバ(別名アテ)を使った楽器制作プロジェクトの始動から1年が経過し、製品開発が活発化している。木材卸のフルタニランバー(金沢市)が中心になった企画で、バイオリンやエレキギターといった楽器が誕生したほか、楽器の周辺機器にも利用が広がる。輸入木材が不足する「ウッドショック」もあり、関連メーカーの開発意欲も高い。

同プロジェクトは「アテノオト」で、2021年に始めた。主に建材に使われる能登ヒバ材を楽器メーカーなどに提案し、楽器材としての価値を創造する取り組みだ。まず、石川県内の楽器メーカーがギター、太鼓などを試作した。その後、県外に本社を置く企業との連携による製品開発が相次ぐ。

山猫バイオリン工房(群馬県藤岡市)は表板、ネックに付いている指板などに能登ヒバを使ったオーダーメード品を開発した。高級品と遜色ない音量や音色が実現したという。バイオリン材の一部が貴重になりつつあるほか、防腐や防虫に強い木である点にも期待している。
フルタニランバーはこのバイオリンの試奏を金沢交響楽団に依頼した。西野卓実団長は「音が大きいのが特徴。映画音楽のような軽音楽などに活用できる」と評価する。
総合楽器店大手の島村楽器(東京・江戸川)は長野県内の楽器メーカーと連携し、エレキギターやウクレレといった楽器を企画した。エレキギター、ウクレレともにボディーやネックに能登ヒバを使った。同社は「軽量で手触りも良く、軽いので演奏しやすい」としている。
楽器ではこのほか、福井県の会社がハープ、東京都の会社がドラムを作るといった動きが出ている。楽器は海外産材を使うケースが多かった。輸入材の不足に加えて、円安の影響もあり、国産材には追い風になっている。

楽器の周辺の機器にも採用が広がる。ギターのアンプの間につないで音に変化を与えるエフェクター、低音を増幅するスピーカースタンドなどにも能登ヒバが使われるようになった。
プロジェクトが軌道に乗ってきたのは、輸入木材の不足に加えて、フルタニランバーが反りや割れを防ぐ高品質な木材を供給しているからだ。高速乾燥技術を使って木材から水分を効率よく蒸発させる。ギターのネックなど耐久性を求められる箇所は、圧縮させることで強度を上げている。
能登ヒバは消臭効果、抗菌効果などが注目されて建材として使われている。古谷隆明社長は「アテノオトは音響効果に注目している。さらに地域材を活用することで木材業界活性化に一役買いたい」と指摘する。新規の取引先の開拓にもつながるという。
(石黒和宏)