能登ヒバでエレキギターや太鼓 楽器プロジェクトが始動
木材卸会社のフルタニランバー(金沢市)と石川県を中心とした楽器メーカーが連携し、能登ヒバの楽器を制作するプロジェクトを始めた。音響効果に着目し、楽器材に活用する試みで、エレキギターや太鼓などを計画中だ。同県の木材業界の活性化に加え、輸入木材が不足する「ウッドショック」に対応した楽器材の安定供給も狙う。

同プロジェクトは「アテノオト」。能登ヒバが別名アテということや、能登エリアなどにちなんだ名称だ。中心となるフルタニランバーの古谷隆明社長は「能登ヒバ材を楽器メーカーに提案し、新しい楽器材として価値を創造する事業」と説明する。すでに成果が出始めたものもある。
「エレキギターに使うと、軽くなり、中高音域の音が強く出る」。デザイン会社のsecca(金沢市)で楽器を担当する北出斎太郎さんは能登ヒバの楽器材料としての可能性に注目する。ギターのボディーや弦の振動を受け止めるネックは海外産の木材が主流という。
現在、プロの演奏家に試験的に使ってもらっている。価格は50万円からで、受注生産を予定している。北出さんは「国産材を使うことは、演奏者にも共感してもらえるのでは」と期待する。

和太鼓製造大手の浅野太鼓楽器店(石川県白山市)は、桶のように板を貼り合わせて締め上げる桶太鼓を試作した。2022年春までの製品化を目指す。従来のスギと比べて曲げに強いため、胴を薄く加工することができる。その結果、振動が伝わりやすく、大きな響きを得られるという。
同社の浅野正規専務は「ウッドショックで外材が手に入りにくく、高くなってきた。県内から材料を調達できるメリットは大きい」と話す。価格はスギの太鼓と同様に15万~20万円程度になる見通しという。
総合楽器店大手の島村楽器(東京・江戸川)はウクレレを計画中だ。これに先だって、石川県の観光PRマスコット「ひゃくまんさん」をあしらったギターピックを商品化、金沢フォーラス店(金沢市)で販売を始めている。青山ハープ(福井県永平寺町)は商品化が可能かどうかを検討中だ。

フルタニランバーは能登ヒバを楽器材に使うため、強度を高める圧縮、経年劣化を抑える乾燥を「適材適所」に使ったという。古谷社長は「楽器は身近な商品で、価値が下がりにくい。これまでの高級な外材に代わるサスティナブルな木材として提案できる」としている。
同社は1904年創業。内装用の木製品の販売が主力で、2021年3月期の売上高は約15億円。アテノオトを通じた地域材のブランド化効果などを通じて、24年3月期には20億円突破を目指す。
(石黒和宏)