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シイタケ菌床活用、高額取引の昆虫飼育 秋田のピルツ

シイタケ栽培が盛んな秋田県横手市で、新事業を立ち上げて地域の課題解決を目指す取り組みが始まった。農業関連スタートアップのPilz(ピルツ、横手市)は収穫後に廃棄する「廃菌床」を活用し、高額取引される外国産昆虫の飼育事業に乗り出した。将来の循環型農業の仕組みづくりにつなげる。

ピルツはシイタケを収穫した後の菌床を昆虫の餌に活用する(横手市)

菌床はシイタケ菌を植え付け育てるための培地。縦や横が20~30センチほどの大きさでブロック状の形をしている。東北では広葉樹のナラ材を加工して使うことが多い。年間約20万個の菌床を製造する同社は秋田県産材をメインに扱う。

シイタケに必要な栄養源の米ぬかや小麦の表皮などを混ぜ、半年かけて菌床をつくる。さらに半年かけ、1個の菌床から重さ約1キログラム(50~60個ほどに相当)のシイタケを収穫する。

だが生産者は収穫後の廃菌床を処分するため、近隣の畑作農家らつてを頼り、1個当たり1円前後の費用を負担し肥料として引き取ってもらう。20万個の菌床で栽培すれば、年約20万円の処理費を負担する計算になる。

収穫後の菌床の活用法が地域の課題になっている(横手市)

横手市は県内のシイタケ生産量の約6割を占める最大の産地だ。市やJAは生産者の所得向上を目指し、規模拡大を後押ししてきた。ただ、それに比例して廃菌床も大きく増え、処分場所の確保など地域の課題になっている。

こうした状況を変えようと、ピルツの畠山琢磨社長が着目したのが高額取引される外国産昆虫だった。自前の山林に置いていた廃菌床にカブトムシやクワガタムシが産卵。廃菌床を食べて幼虫が成長したのを目にしたのがヒントになった。

ピルツが繁殖用に飼育するヘラクレスオオカブトのオスの成虫(横手市)

ピルツは廃菌床を加工した餌を使い、約5000匹の幼虫を飼育する。例えば「カブトムシの王様」といわれるヘラクレスオオカブトは、オークションで300万円の値がつきネット上で話題になった。高額取引される昆虫飼育を目指し、今秋にも電子商取引(EC)サイトやSNS(交流サイト)などを通じて販売を始める。

畠山社長が重視するのは廃菌床活用の仕組みづくりだ。収穫後に手を加え、昆虫飼育に適した栄養分豊かな餌にする。ブリーダーらに良質で低価格な餌を供給できるようになれば、地域の課題解決につながり生産者の新たな収入源にもなる。幼虫のフンは肥料として農地に還元できる。

ピルツが飼育するヘラクレスオオカブトの幼虫(横手市)

隣接する湯沢市で中小企業の経営相談にあたる湯沢市ビジネス支援センターがピルツの取り組みをサポートする。藤田敬太センター長は「世の中で不要とされているものを活用してビジネスに変える試みは、循環型の社会を実現するうえで意義がある」と強調する。

ピルツはドイツ語でキノコを意味し、2019年9月に設立した。日本政策金融公庫の融資を受け、シイタケ栽培のハウスや菌床の製造棟を整備。地域の農業に付加価値を生む取り組みに力を入れている。

(秋田支局長 磯貝守也)

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