JR四国、運賃改定の理解求める 瀬戸大橋線も赤字に

四国の鉄道網の厳しさが増している。JR四国が17日発表した2019~20年度の線区別の収支で、19年度は瀬戸大橋線が唯一、黒字を確保したが、20年度は全線区が赤字となった。JR四国は新型コロナウイルス禍における厳しい経営状況を周知し、23年春を目指す運賃改定で必要な理解を得たい考えだ。
運行する全8路線(18線区)を対象に、100円の収入を得るために必要な費用「営業係数」を公表した。100を超えれば赤字で、数字が大きいほど採算が悪いことを示す。19年度に全線平均で155だった係数は、20年度に268と大きく悪化した。

線区別の状況では、19年度に黒字だったのは瀬戸大橋線(児島―宇多津間)だけだったが、20年度は同線も赤字に転落し、全線区で赤字となった。営業係数が最も悪いのは予土線(北宇和島―若井間)の1401で、牟岐線(阿南―海部間)の1185が続いた。
人口減にコロナ禍も加わり、鉄道インフラの維持は厳しさを増している。営業係数は営業費を収益で割って算出している。この営業費には列車運行や駅業務といった運行に直接関わる費用のほか、本社経費などの間接費も含まれる。
コロナ禍の影響が少ない19年度までは、人口が多い香川・愛媛県内を行き来する6つの線区は、直接経費のみを加味した営業係数は黒字となっていた。一方で、20年度は利用者の減少により収益が大幅に減ったものの、修繕などに必要な費用は横ばい圏だった。そのため20年度には鉄道運行に必要な直接経費も稼げない状況に全線区が陥った。
JR四国が線区別の収支を公表するのは今回が2回目。今後は設備の維持費が増える見込みで、営業係数がさらに悪化する可能性がある。21年度以降の収支状況を毎年公表する計画で、23年春を予定する運賃の値上げ幅や存廃の検討などを含め、JR四国は「あるべき交通体系について議論する」という。
営業係数は経営効率を表す1つの指標だが、利用者が多い地域ほど経費がかさみ、損失額が大きくなりやすい。営業係数が1401と最も悪い予土線の営業損失は20年度に9億5000万円だったが、営業係数が192と最も低く抑えられている予讃線(高松―多度津間)の営業損失は同23億円に達する。瀬戸大橋線も損失額は予土線以上に大きい。
1日の平均通過人員(1日1キロあたりの輸送密度)が200人にとどまる予土線以上に、70倍超の約1万5000人の予讃線(高松―多度津間)の方が、営業係数の悪化による影響は大きい。利用者数を回復させる取り組みやコスト削減などが求められている。
(亀井慶一)
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