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四国で探る先進事例、将来へのヒントに 4県支局座談会

データで読む地域再生 四国

全国各地のデータを分析して読み解くシリーズ「データで読む地域再生」では、地方が抱える課題の改善につながる先進的な事例を取り上げてきた。四国の自治体も多くの項目でランキング上位に食い込んだ。将来に向けた各地域ならではの取り組みを、4県の支局記者が座談会形式で振り返った。

人口減少、子育てや移住促進で対策

高松 四国は全国の中でも人口減が進んでいる。対策は様々考えられるが、データを比較してみると成果を上げている自治体も多くある。香川県まんのう町は子育て環境の整備により2013~17年の出生率は03~07年から上昇し、中四国の市町村で上昇幅はトップとなった。家を建てると最大200万円が補助されるといった若者向け補助事業も実施している。データを基にした取材は「実感はないけど」と返答されることも多かった。

高知 域内だけでなく域外から来てもらうという視点も大切だ。議員のなり手不足が全国的な話題になった大川村が、移住者の増加で個人住民税を大きく伸ばしたのは面白かった。村議会議員になった若い移住者は課題山積の村を振興したいという熱意にあふれていた。移住者に対する高齢住民の信頼は厚い。

徳島 徳島は16年度から、親が住民票を移さなくても、子供が大都市と地方の小中学校を行き来できるデュアルスクール制度を全国に先駆けて導入した。新型コロナウイルスの影響でいったん中断していたが、状況が落ち着けば「わが子に地方暮らしを経験させたい」という親が増えてもおかしくない。移住に直結しなくても、地域にとっては息の長い関係人口づくりが期待できる。

高知 高知の佐川町に行ってみると、プログラミングやデザインを学んだ若者が工房に多く集まっていて驚いた。彼らは地域おこし協力隊として移住しており、地方暮らしに興味があるからこそ、縁もゆかりもない土地に飛び込んでみたくなるそうだ。佐川町は20年度の協力隊受け入れ人数が四国で最も多い。町の人材不足を補い、かつPRにもなっている。

松山 人口減で事業者数が減ってしまえば地域の経済活動も衰退してしまう。起業しやすい環境を整えることも、広い意味で対策の一つといえるのではないか。新設法人の増加幅が中四国で大きかった松山市では、コロナ対応の相談窓口「無料個別相談会」を設けており、そこで中小企業診断士と社会保険労務士が相談に乗っている。

高松 人が少ないからこそ、今いる人材が活躍できる環境が必要だね。高松信用金庫(高松市)が立ち上げた女性起業塾は、先輩起業家との接点を生むコミュニティーになっている。苦しいとき、先輩の言葉が救いになったと話す経営者がいた。地方ならではの人との距離の近さも、起業するうえで武器になっていくといいね。

土地ならではの食、PRの強みに

松山 地方の強みの一つが、土地ならではの食だと思う。愛媛県の19年農業産出額は中四国で2位に付けており、かんきつ類の知名度は群を抜いている。「日の丸みかん」というきり箱に入ったブランドミカンが東京大田市場の初競りにかけられ、過去最高の150万円(20キログラム)で落札されたのは印象的だった。

高松 それだけの価格がつくのは、ブランドとして確立できているからなんだろうね。

松山 栽培されている西宇和地区は、直射日光、海面の照り返し、段々畑における石垣の放射熱の「3つの太陽」を浴びて育つ温州ミカンを西宇和みかんとしてブランド化している。初競りで取引されたJAにしうわの早生(わせ)ミカンの平均単価も、前年と並ぶ過去最高値で好調な滑り出しだった。

高知 山の多い四国はジビエの利用にも積極的。特に高知の取り組みで面白いのは高知商業高校(高知市)で18年に設立された部活動「ジビエ部」だね。英語教諭が授業中、自身がハンターであることを披露したのがきっかけだった。持続可能な社会に関心の高い生徒があっという間に集まり、部活としてハンバーガーの具材開発を始めた。こんな若者が1人でも高知に定着してくれたらと願わずにはいられない。

徳島 徳島県はシカ肉やイノシシ肉の仕入れに助成金を出し「阿波地美栄(じびえ)」の普及をめざしている。ただ、実際は課題も多い。県は23年度までにニホンジカの推定生息数を1万頭以下にしたい考えだが、19年度の推定数は7万頭に近い。ジビエのPRに加えて、捕獲体制や処理施設の整備も欠かせない。

高松 地域の食を新たにつくるという点で、年々増えている地ビールも興味深い。香川の小豆島では地ビール醸造で事業者の連携が生まれていた。大麦やホップは近くで栽培し、酵母はしょうゆメーカーがオリーブの花から採取したものを使っている。横のつながりがあるからこそ、ビールを通じた島全体の発信にもつなげられている気がする。

徳島 神山町の醸造所「KAMIYAMA BEER」が今秋に売り出した「成層圏ビール」はテレビの全国放送でも話題になった。徳島大学が気象観測用の気球を使ってビール酵母を打ち上げ、セ氏マイナス70度の成層圏から戻ってきた酵母を使って醸造所が商品に仕立てた。

松山 愛媛ではクラフトビールで観光客を呼び込もうとしている。大三島(今治市)にある醸造所なんだけど、その土地で飲むからこその良さがあるのだと思う。

持続可能な社会、地方から形に

徳島 地球温暖化や国連の持続可能な開発目標「SDGs」への関心が高まっている。上勝町は03年に日本初の「ごみゼロ」宣言をしたことで知られる。町内のごみ収集場は1カ所のみで、持ち込んだごみは45品目に分けて出すという徹底ぶり。それでもごみのリサイクル率は80%前後となっている。全国平均の約20%とは桁違いだが、町は30年までのゼロ達成に向けて、22年に新たな行動指針をまとめる計画だ。

高松 上勝町は海外の評価が高くて驚いた。海外旅行メディア「ロンリープラネット」が22年版の旅行ガイドブックの中で四国を初めて取り上げたが、その中で廃棄物ゼロの町として紹介している。持続可能な社会づくりは観光資源の一つにもなっており、地域振興につながりそうだ。大都市では大量生産・大量消費の構造が組み込まれている分、四国は有利かもしれない。

徳島 講談社の女性誌「FRaU(フラウ)」のSDGs特集号で、徳島県が丸ごと1冊取り上げられたのも話題になった。先進的な事例として扱われていて、上勝町のごみゼロ活動や、地域を挙げてのサテライトオフィス誘致などが評価されたようだ。

高知 森林面積の大きさも四国ならではで、環境を守りながら活用していく必要がある。佐川町では個人で小規模に伐採や搬出をする「自伐型林業」を新たな産業として推進している。管理できる状態にすることで、次世代にも自然を残していくことができるからね。

松山 愛媛ではバイオマス発電が拡大している。四国中央市のバイオマス発電容量は20年末で7万キロワット強と四国の自治体別で突出した水準にある。重油や石炭からの燃料転換を目指す製紙会社が、パルプ製造工程で出る廃液や木質燃料を使って取り組んでいる。今後も石炭燃料などからの転換をさらに推し進めるうえで、バイオマス発電への期待は大きい。

高松 残念ながら香川県のバイオマス発電容量は全国最下位だった。ただ坂出市で大規模なバイオマス発電所の建設が計画されており、また生活ごみや食料残渣(ざんさ)などの廃棄物でバイオガスを作り、熱電併給するシステムが香川にはある。木材だけでなく多様な廃棄物を利用する先進的なプラントで、全国でも注目されている。

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