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舘山寺温泉「ホテル九重」閉館 需要変化に対応できず

遠州鉄道(浜松市)の子会社が運営し、10月末での閉館を決めた浜名湖畔の高級温泉旅館「ホテル九重」。バブル経済さなかの1987年に開業し、団体旅行のブームに乗って多くの客を集めた。閉館の背景には、時代とともに変わる需要への対応遅れがあった。遠鉄グループはホテル跡地の活用を含め、舘山寺温泉周辺の観光事業の再構築を迫られている。

18日午前、ホテル九重に続く入り口には立ち入り禁止の柵と貼り紙があった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2020年4月から休業を続けていたが、再開することなく閉館と11月からの解体が決まった。地元のタクシー運転手は「営業していたころも客を運んだ経験はあまり多くない。少し値段が高かったね」と話した。

「コロナはきっかけにすぎない。遅かれ早かれどこかで判断する必要があった」。遠州鉄道の丸山晃司専務は15日の記者会見でこう説明した。

ホテル九重は開業当時に需要が多かった企業の社員旅行など、団体客を的にした高級旅館だ。建設には約100億円かけ、計500人近くを収容できる86室の客室をはじめ、浜名湖を望む天然温泉や料亭、宴会場、会議室などを備えた。

開業からわずか数年で営業最盛期が訪れた。1991年度に約10万人が宿泊し、約40億円を売り上げた。しかしその後は団体旅行のブームが去り、客足は下降線をたどった。06年に実施した大規模な改装も新たな客層の開拓にはつながらなかった。19年度の宿泊者数は6万人程度にとどまった。

ホテル九重のある舘山寺地域全体も、近年はにぎわい減少が課題となっていた。温泉街の年間の宿泊者数は、90年代初めの70万人からコロナ拡大前の2018年度には40万人まで減った。

地域の観光事情に詳しい市内のある経営者は「浜松の人は舘山寺にあまり行かない。温泉街全体として地元客にあまりアピールできていなかった印象がある」と指摘する。コロナ禍で団体旅行の動きが止まったことが決定打となった。

遠鉄グループのレジャー事業は21年3月期に、売上高にあたる営業収益が前の期比77%減の19億円、営業損益が14億円の赤字に落ち込んだ。大黒柱である舘山寺エリアの不振は事業の行方を大きく左右する。スーパーや介護、自動車販売などはコロナ禍でも業績が堅調に推移するなか、レジャー事業の再構築は待ったなしだ。

同事業のコスト削減にはすでに取り組んでいる。旅行代理業を手掛けていた子会社の遠鉄トラベルを20年9月に吸収合併し、全店舗を閉鎖した。ホテルなどで余剰となった従業員についてはグループ内でスーパーや介護などの事業に配置換えしてきた。

ホテル九重の跡地の再開発については現時点で白紙。閉鎖が地域全体に与えるマイナス影響も指摘されるなか、丸山専務は「我々にとって非常に重要な場所。舘山寺の観光の一翼を担っている自負もある」と説明。土地売却は検討していないという。

同グループは舘山寺で、ファミリー層向けの宿泊施設「ホテルウェルシーズン浜名湖」や遊園地「浜名湖パルパル」なども運営する。こうした施設は静岡県西部や愛知県東部など近隣からの客も比較的多く集める。

コロナ禍の先行きが依然として不透明ななか、団体や海外客に過度に依存しない集客や周辺一体での周遊策づくりなど、細かな顧客ニーズに対応できる態勢づくりが求められる。

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