神奈川の公示地価、住宅地1.4%上昇 新横浜線沿線で顕著

国土交通省が22日発表した2023年の公示地価(1月1日時点)で、神奈川県内の住宅地の平均変動率は前年比1.4%の上昇だった。上昇は2年連続で、08年以来の高い伸び率だった。相模鉄道と東急電鉄が直通する「新横浜線」の開業効果が見込める沿線の駅周辺で上昇が目立った。商業地は2.9%上昇、工業地は4.3%上昇し、それぞれ前年よりも上昇幅が拡大した。

住宅地の上昇率は、茅ケ崎市の伸びが顕著だった。市区町村別の上昇率では、横浜市西区(3.6%上昇)を抑えて茅ケ崎市が首位(4.1%上昇)となった。上位10地点でも5地点が茅ケ崎市だった。
特に駅前に大型商業施設があるJR辻堂駅(神奈川県藤沢市)に近い地点で、住宅需要が強いという。新型コロナウイルス禍に伴うテレワークの普及で自然豊かなエリアの人気が継続している。
不動産仲介のリストインターナショナルリアルティ(横浜市)は辻堂駅周辺の物件について「JR東海道線が利用でき東京都心へのアクセスも良く、都内居住の購入客も多い」と話す。茅ケ崎市周辺で、都内居住の購入客が7割を占めるマンションも出ているという。

住宅地は前年からの継続調査地点のうち74.5%で上昇した。横浜市の平均変動率は1.5%の上昇、川崎市は1.7%上昇だった。横浜市東部など交通利便性が高いエリアの需要が堅調だ。
神奈川県央部から東京都心へのアクセスが向上する相鉄・東急新横浜線の開業により、相鉄・東急の沿線の駅周辺地域の上昇が続いている。
相鉄・西谷駅(横浜市保土ケ谷区)周辺の地点では4.5〜5.2%の上昇率となったほか、相鉄・羽沢横浜国大駅(同市神奈川区)周辺の地点が5.3%の上昇だった。相鉄・大和駅などがある大和市でも若い世代が流入し、地価が上昇している。
相模原市は1.9%上昇となり前年の0.8%上昇から上昇幅が拡大した。リニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」が設置される予定の橋本駅周辺地点は上昇が継続しており、駅から少し離れた地点にも上昇が波及している。
下落した地点でも下落率は前年比で縮小した地点が多かった。横須賀市は0.3%下落(前年は1.9%下落)、三浦市も0.7%下落(前年は2.9%下落)にとどまった。近年、下落が続いていたが、値ごろ感から駅近くの平たん地で需要が増加しているという。
ケイ・ツー不動産鑑定の小林一寿氏は「物価高でマンション価格も上がっており、連れだって地価も上昇している」と指摘した。
商業地、横浜中華街下げ止まる コロナ禍影響小さく
商業地の平均は2.9%の上昇となった。11年連続の上昇で、上昇幅は前年の1.0%から拡大した。継続調査地点のうち87.7%が上昇となった。新型コロナウイルス禍の影響が和らぎ、インバウンド(訪日外国人)の回復もあって観光地ではにぎわいが戻っている。
神奈川県箱根町は1.0%上昇し、前年の1.0%下落から上昇に転じた。鎌倉市も3.2%上昇となった。JR鎌倉駅周辺では観光客が増加しており、コロナ後を見据えたホテルなどの出店もみられるという。横浜市の横浜中華街の地点では店舗賃貸需要も回復傾向で、地価が横ばいとなった。コロナ禍の影響で2021年、22年は下落していたが、下げ止まった。
横浜駅周辺など再開発が進む地域での上昇も目立った。低層階が商業施設で、上層階をマンションとする高層ビルなどが建設されている地域では期待感から上昇が継続している。横浜市のみなとみらい21地区では企業、大学の進出が相次ぎ、大幅に上昇した。
工業地は4.3%上昇と22年(2.6%)に比べて上昇幅が拡大した。高速道路網の整備が進み、インターチェンジ周辺だけでなく、少し離れた地域でも値ごろ感から地価が上昇している。電子商取引(EC)需要も引き続き堅調で、物流施設や倉庫に適したエリアでは大幅な地価上昇がみられるという。
関連企業・業界