四国4県公示地価、県都で回復の兆し 全体では下落続く

国土交通省が22日発表した2023年の公示地価(1月1日時点)で、四国4県の平均変動率は住宅地、商業地ともに0.7%の下落だった。再開発が進む県庁所在地の一部地域で回復傾向がみられ、前年と比べ住宅地は0.1ポイント、商業地は0.3ポイントそれぞれ改善した。一方、幅広い地域で新型コロナウイルス禍の影響が残り、四国全体の下落傾向に歯止めはかかっていない。
四国の全用途の変動率は0.6%の下落で0.2ポイント縮小したが、全国と比べると厳しい状況が続く。全国の全用途は1.6%で、三大都市圏を除く地方平均も1.2%とそれぞれ上昇した。人口減などが4県に重くのしかかるが、県庁所在地の一部地域では明るい兆しがみられる。

香川県の中心部では再開発や不動産建設の動きが相次ぐ。高松駅周辺ではJR四国が商業施設を建設中で、香川県は中四国地域で最大規模の体育館を整備中だ。商店街では県内外のデベロッパーによる複数のマンション開発事業が進行している。
こうした影響で価格が上昇したのは26地点と前年の9地点から増加したが、住宅地と商業地いずれも高松市内に限られる。不動産鑑定士の鳥飼和彦氏は「生活利便性に優れる地域を中心に回復傾向がうかがえる」と話す。
愛媛県の全用途平均は31年連続で下落したが、変動率は前年に比べて0.2ポイント縮小した。地価の上昇地点も前年の11地点から19地点に増えた。上昇に転じたのは全て松山市内だが、特に回復が鮮明だったのが、道後温泉や大街道商店街などの商業地だ。
大街道商店街では空き店舗率が高止まりしているものの、不動産鑑定士の藤井徹哉氏は「コロナ禍の影響が限定的になり、テナント需要が回復しつつある」と説明する。再開発の動きがある伊予鉄道・松山市駅やJR松山駅の周辺でも地価が上昇傾向にある。

今後の懸念材料は物価高の影響だ。家計や企業業績への影響が見込まれ、藤井氏は「個人消費や住宅需要に与える影響を注視する必要がある」と指摘する。
高知県でも人口の半分が集中する高知市で回復傾向が鮮明となっている。高知市の住宅地の下落幅は0.2ポイント縮小した。上昇地点は前年の5地点から13地点に増加した。
不動産鑑定士の森沢博之氏は「低金利などを背景に住宅需要は堅調だ」と話す。南海トラフ地震による津波浸水懸念から高台や内陸部が選ばれる傾向がみられるほか、交通の利便性が高まった郊外の地点も上昇した。
高知市の商業地では人の流れが回復しつつあり、需要に持ち直しの動きがみられる。中心アーケード商店街の地価は横ばいとなり、森沢氏は「コロナ禍の打撃は底を打ったようだ」と分析する。

徳島県は全用途が25年連続で低下したものの、下落率は0.6%と2年連続で縮小した。不動産鑑定士の西岡聖記氏は「全般にコロナ前の水準に回復してきた」と話す。
回復の勢いで目立つのは工業地だ。0.3%増となった22年に続き、23年は0.6%の上昇となった。中でも徳島市津田海岸町の上昇率は3.4%と、四国にある34地点の工業地で最も高い。高速道路の徳島南部自動車道が開通した効果が出ている。
市町別の全用途で唯一、地価が上昇した北島町(0.6%)も、3.0%上昇した工業地が全体を押し上げた。高速道との接続の良さを強みに企業誘致が進む。一方、県南部の美波町や牟岐町、西部の美馬市や三好市などは下落率が大きい。