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「歩き」訪日客導く通訳ガイド コロナ収束後見据え育成

四国の売り方・遍路 道拓く㊤

観光を取り巻く環境は新型コロナウイルス禍をきっかけに大きく変わった。インバウンド(訪日外国人)は途絶え、国内移動も自粛の状況が続く。連載企画、四国の売り方第3部では、四国観光の原風景ともいえる「お遍路」に注目する。新型コロナ後を見据え、遍路を新たなアプローチで打ち出した取り組みを追う。

四国遍路の起点となる1番札所、霊山寺(徳島県鳴門市)に3月、約10人の通訳が集まり、NPO法人「遍路とおもてなしのネットワーク」の宍戸栄徳事務局長から歩き遍路について指導を受けた。宍戸氏はこれまで約50人の外国人に付き添い、般若心経の唱え方から宿泊先の予約、現金の必要性まで、お遍路にまつわる注意点を伝えてきた経験がある。

地元通訳が、外国人の歩き遍路について指導を受けた(3月、徳島県鳴門市の霊山寺)

「ここ数年、初訪日で遍路をする人が増えている。日本の生活習慣などを事前に伝える必要がある」(宍戸氏)。同行した「四国遍路ガイドの会」は、将来のインバウンド需要を見据えて外国人遍路のガイドを担う地元通訳を育成するため、2019年に設立された。外国人が興味を持ちやすいことなどを共有しながら、一行は6番札所まで歩いた。

遍路客は減少傾向にある。1953年に伊予鉄道が「バス巡礼」を始めたことで団体バス遍路が普及し、マイカーによる巡礼も増えたが、近年は旅行スタイルの変化などから落ち込みが続く。21番札所、太龍寺(徳島県阿南市)へのロープウエーの乗客は、2000年度の13万8000人から19年度に5万4000人となった。20年には新型コロナの影響で納経所が一時閉鎖されるなど、札所によっては人出が前年の1割ほどと厳しい状況にある。

歩き遍路では道中の目印が道しるべになる

遍路客が減れば宿も減り、お接待文化や地域の雇用が失われかねない。そんな中で外国人による歩き遍路は、遍路文化継承に向けた支えとして期待されていた。遍路とおもてなしのネットワークによると、コロナ前まで外国人の歩きお遍路は増加傾向にあった。札所を一巡した訪日客は19年6月末時点で年間345人と、2年連続で全体の15%を超えた。

遍路を研究する徳島大学教養教育院准教授のモートン常慈氏は「英語やドイツ語などのSNS(交流サイト)グループがある。遍路のために飛行機を予約したものの、コロナでキャンセルした人もいる」と関心の高さを指摘する。

四国遍路ガイドの会は、コロナ後のインバウンド需要を取り込みたい考えだ。香川を中心として四国4県に約40人の会員がいる。これまで遍路に限らず外国人が四国を訪れる際には、大阪などのツアー会社が大阪の通訳を手配することが多かったという。「地元に詳しい通訳が案内すれば満足度は高まるはず」(大山愛会長)と考え、外国人遍路のガイドを地域の雇用につなげるため、人材育成を急ぐ。

フランスで出版された四国遍路の本㊧を読み、訪日する外国人もいる

四国遍路が世界遺産に登録されれば飛躍的に関心が高まる可能性がある。一方で「地元の受け入れ体制はまだ万全ではない」(大山氏)ことから、将来に向けた準備を急ぐ。

宿や土産物など関連産業が多く、お遍路は四国の経済基盤とも言われる。地元ガイドを通じて地域にお金が環流する仕組みを作れれば、その基盤は一層強固なものになる。

四国遍路とは
香川県善通寺市で生まれたとされる真言宗の開祖、弘法大師(空海、774~835年)ゆかりの寺院88カ所を巡ること。1番の霊山寺(徳島県鳴門市)から88番の大窪寺(香川県さぬき市)まで霊場(札所)の番号が振られている。11世紀後半~12世紀前半に原型が生まれ、17世紀には現在の形になったとされている。
四国全体に散在する88の札所を結ぶと約1400キロメートルになり、歩くと40~50日かかる。始める札所や順番に決まりはなく、江戸時代には僧侶による修行だけでなく、救済や現世利益を求める庶民にも広がった。巡礼者は「お遍路さん」と呼ばれ、食べ物や飲み物を無償で施す「お接待」文化が根付いている。

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