「世界の都市力」東京3位維持も点数下げる 渡航規制が影

森ビル系シンクタンクの森記念財団都市戦略研究所(東京・港)が14日発表した「世界の都市総合力ランキング2022」で、東京は3位を維持したものの、都市の機能を評価するスコアは下げた。新型コロナウイルス対策の海外渡航規制が影響し、評価対象の全6分野のうち4分野で順位を落とした。2024年に五輪・パラリンピックの開催を控える4位のパリが点数を伸ばし、東京とは僅差となった。
ランキングは世界の主要48都市を対象に、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野、計70指標を指数化して作成した。コロナの影響に加えて、国際人流・国内人流や居住環境の変化により、各都市の順位が入れ替わった。
竹中平蔵所長(慶応義塾大学名誉教授)は「20年から本格化したコロナ危機に対する政策によりランキングの変化がみられた」と話した。

1位のロンドン、2位のニューヨークなど上位6都市の順位は前年と変わらなかった。東京は環境の分野で順位を上げた一方、経済や文化・交流などで順位を下げ、総合スコアを前年から43.8ポイント下げた。
経済分野は前年の4位から5位に下げた。特に「GDP成長率」の指標は33位と低く、「経済の自由度」も26位にとどまった。文化・交流も4位から5位に下げた。アジアの都市で減少が目立った「外国人訪問者数」は20位、「ナイトライフ充実度」は27位だった。
一方、環境は前年の17位から13位へ上げた。東京都が30年までに温暖化ガス排出量を00年比で50%削減する目標を掲げたことが評価され、「環境への取り組み」は10位だった。
パリは東京との総合スコアの差を、前年の60.2ポイントから10.3ポイントへ縮めた。パリは居住分野が1位で、「住宅賃料水準の低さ」「社会の自由度・平等さ」などの指標がスコアを押し上げた。
前年11位だったメルボルンは9位へ上昇。就業環境や生活利便性の向上が評価された。ドバイも前年14位から11位へ上げた。いち早く外国人観光客の受け入れを再開したことと、21~22年の万博開催が評価された。
日本国内の都市では、大阪が前年から順位を1つ落として37位、福岡は42位を維持した。
東京の都市イメージ「テクノロジー」「すし」「アニメ」
同研究所は、ランキング上位都市を対象に実施した「都市のイメージ調査」の結果も公表した。ロンドンなどは訪問経験の有無にかかわらずランドマークがキーワードに挙げられる傾向があった。一方で東京の訪問経験のない人は「テクノロジー」「すし」「アニメ」などを挙げた。
市川宏雄理事(明治大学名誉教授)は「東京は多くの観光資源を持ちながら誘導がうまくできていない。朝から晩まで楽しめる場所の発信が求められる」と述べた。