浜松ホトニクス、「LiDAR」のコスト減・小型化へ新部品
浜松ホトニクスは12日、高性能センサー「LiDAR(ライダー)」のコスト低減や小型化につながる部品を開発したと発表した。倉庫や工場を走る自動搬送車(AGV)などを用途とするライダーが対象。独自の光半導体素子の製造技術を応用して機構を簡素にし、生産工程の手間を省けるようにした。10月末からメーカーへの試供を始め、2023年4月に量産を始める予定だ。

開発したのはライダー向けの光センサーで、フォトダイオード(受光素子)と信号処理回路を同じ一つのパッケージに内蔵した部品だ。ライダー向けに使われる遠くの物体までの距離が測れるアバランシェ・フォトダイオード(APD)で、通常は付属するマイコンや温度センサーなどを不要にする技術を確立した。
マイコンや温度センサーは光の電気信号への変換を温度変化に応じて調整し、APDによる距離計測を安定させるために付けられる。これらに代わり、電気信号へ変換する際の「増倍率」を固定できる素子「セルフバイアスジェネレーター(SBG)」を半導体基板上に形成しAPDと一体化した。
マイコンや温度センサーをなくしたことで光センサーの大きさは従来の10分の1ほどに小さくなり、マイコンなどを基板に実装する工程も省ける。価格は従来に比べ3割ほど安くなるという。併せて、同一パッケージに内蔵する信号処理回路「トランスインピーダンスアンプ(TIA)」をAPDの性能を最大限引き出すように設計し、計測できる距離や精度を高めた。

23年4月以降の量産時の単価は税抜き6000円ほど。初年度は月間1万個、3年後には同5万個の販売を目標とする。ライダーは人を運ぶ自動運転車両などでも需要が高まっているが高いコストが課題。浜松ホトニクスは新たな光センサーをまずはAGVなど汎用的なライダーで採用を促し、自動運転車など向けのより高性能なライダーにも広げたい考え。ライダー向け光センサーで6~7割のシェア獲得を目指す。
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