/

地方圏の公示地価、2年連続上昇 コロナ禍から回復顕著

国土交通省が22日発表した2023年1月1日時点の公示地価の全国全用途平均は2年連続で上昇した。地方圏も2年連続で上昇した。新型コロナウイルス下で緩やかに景気が持ち直す中で、都市部を中心に地価の上昇が継続し、回復傾向が顕著となった。三大都市圏では大阪圏の商業地が3年ぶりに上昇へと転じた。

東京圏

商業地は3.0%上昇した。東京都内では23区の全てで上昇。再開発が進み利便性の向上した地点や上層階の住宅利用が可能な地点で上昇が目立った。コロナの影響で下落が続いていた千代田・中央・港の3区も国内観光客の回復やオフィスの投資需要の高まりで上昇に転じた。

横浜市の商業地は3.4%上昇した。特に西区は大学のキャンパス移転や企業進出により5.2%上昇した。相模鉄道・東急電鉄の直通線「新横浜線」の新駅が開業した港北区の上昇率は2.8%にとどまった。国交省によると、同線開通の効果は「期待感による上昇が見られた地点はあったが、全体としてまだ顕著に出てきていない」という。

住宅地は2.1%上昇し、23区すべてで前年から上昇幅が拡大した。複数の路線が乗り入れる利便性の高い駅周辺のマンションや戸建ての需要が旺盛で、都内では上昇率の大きい順に台東区(4.8%)、豊島区(4.7%)、中野区(4.6%)だった。

大阪圏

商業地は2.3%上昇した。前年の横ばいから、3年ぶりに上昇へ転じた。底堅いオフィス需要やJR大阪駅北側の再開発地区「うめきた2期」への期待感から、「グランフロント大阪南館」が3年連続で商業地の最高価格になるなど梅田周辺で地価が上昇した。観光客の回復により、ミナミでも横ばいかプラスの地点が多かった。

京都市は前年の0.7%から上昇幅が3.3%に拡大。市内に国内観光客が戻りつつあり、地価が下落した地点は一つもなかった。京都駅東側では開発機運が高まっており、下京区で上昇が目立った。

住宅地は2年連続で上がり0.7%上昇した。大阪市は福島区や天王寺区など利便性の高い地区のマンション需要が旺盛で、1.6%上昇。神戸市は1.2%の上昇で、住宅地の変動率上位は灘区が占めた。京都市は1.2%上昇した。

名古屋圏

商業地は3.4%上昇し、名古屋市内では全16区で上昇幅が拡大した。「栄(さかえ)」地区で高級ホテルや大型商業施設の再開発が進み、地価上昇のけん引役となっている。人流が回復し店舗の出店意欲も戻りつつある。上昇率が最も高かったのは栄地区の「シティコーポ久屋・建設会館」だった。

名古屋圏は商業地・住宅地ともに上昇幅が東京・大阪圏より大きい。コロナ禍によるインバウンド減少の影響が小さく、回復も早かったとみられる。

住宅地は2.3%上昇した。名古屋市内中心部の中区(11.1%上昇)や東区(6.5%上昇)の上昇率が高かった。市町村別で上昇率が最も高かったのは東海市で、7.8%上昇した。東海市の太田川駅周辺は名古屋駅まで20分以内と利便性が高い。名古屋市内と比べ価格も安く、地価が上昇している。

地方圏

商業地は1.0%上昇し2年連続でプラスとなった。中心的な地方4市「札幌、仙台、広島、福岡」でいずれも上昇幅が拡大。福岡市はJR博多駅周辺などでの再開発促進策の効果で上昇率が10.6%と地方4市で首位だった。

住宅地は1.2%上昇した。地方4市のうち札幌市は上昇率が15.0%に拡大した。住宅需要は周辺にも広がり、札幌へのアクセスがよい江別市は27.5%上がった。北広島市はプロ野球の新球場を核とした「北海道ボールパークFビレッジ」開業への期待から住宅地(26.2%)、商業地(26.7%)とも上昇した。

地方4市を除くその他の市町村の商業地は3年ぶりに上昇し、住宅地は28年ぶりに上昇へ転じた。熊本県菊陽町は住宅地が9.7%上昇し、商業地は21.7%の急上昇となった。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の進出で住宅・オフィス需要が急増した。

東京の赤坂地区、住宅地で6年連続首位


全国住宅地の地価高額地点では東京都港区の高級住宅街にある地点「赤坂1-14-11」が1平方メートル当たり512万円と6年連続で首位だった。上昇率は2.4%。上位10位で上昇率が最も高かったのは同304万円と5.2%上昇した渋谷区恵比寿西2-20-7だ。
三大都市圏の住宅地平均価格を市区別にみると、東京圏の最高は高級住宅街の通称「番町」を抱える東京都千代田区が同279万1400円。大阪圏は大阪市西区が74万2000円、名古屋圏は名古屋市中区が同104万5000円だった。
▼三大都市圏の範囲 東京圏は東京都区部全域と多摩地区(奥多摩町、檜原村を除く)、神奈川県の一部(横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市など)、千葉県の一部(千葉市、市川市、船橋市、浦安市など)、埼玉県の一部(さいたま市、川越市、川口市、越谷市など)、茨城県の一部(取手市、守谷市など)。
大阪圏は大阪府全域と兵庫県の一部(神戸市、尼崎市、西宮市など)、京都府の一部(京都市、宇治市など)、奈良県の一部(奈良市、天理市など)。
名古屋圏は愛知県の一部(名古屋市、岡崎市、一宮市など)と三重県の一部(四日市市、桑名市など)。
それぞれ首都圏整備法や近畿圏整備法、中部圏開発整備法の対象地域を指す。
2023年公示地価のあらまし
①標準地の設定対象区域
市街化区域および市街化調整区域に区分された都市計画区域約5万2208平方キロメートルと、その他の都市計画区域約5万751平方キロメートル、都市計画区域外の公示区域。対象は1376市区町村で、内訳は東京23区、787市、528町、38村(東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い調査を休止した3町を含む)。
②標準地の設定数
市街化区域2万563地点、市街化調整区域1373地点、その他の都市計画区域4047地点、都市計画区域外の公示区域17地点の計2万6000地点。このうち福島第1原発事故の影響で7地点は調査を休止している。市街化区域の用途地域別地点数と地点設定密度は以下の通り。
住宅地と宅地見込地=1万4351地点で東京、大阪、名古屋の三大都市圏と地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)は約0.6平方キロメートル当たり1地点。それ以外の地方圏は約1.7平方キロメートル当たり1地点。
商業地=5216地点で約0.7平方キロメートル当たり1地点。
工業地=996地点で約4.7平方キロメートル当たり1地点。
③標準地の選定基準
標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標になるだけでなく、公共事業用地の取得価格算定や、国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。このため、標準地は特に次の点に留意して選定されている。
代表性=当該区域全体の地価水準をできる限り代表し得るものであること。
中庸性=近隣地域での土地の利用状況、環境、面積、形状などが中庸のものであること。
安定性=近隣地域での安定した土地の利用状況に配慮したものであること。利用状況が移行している場合はその変化にも十分に配慮したものであること。
確定性=明確に他の土地と区別され、範囲が特定できるものであること。
④価格の判定
公示対象は毎年1月1日における標準地の単位面積当たりの正常な価格。売り手にも買い手にも偏らず、客観的な価値を表す。正常な価格の判定は標準地に建物がある場合は建物がないもの、つまり更地として行われる。各標準地について2人以上の不動産鑑定士の評価を求めて結果を審査し、必要な調整を行って判定する。2023年の地価公示では不動産鑑定士2331人が鑑定評価に携わった。
⑤公示方法
23日付の官報で公示される。公示地価などを記載した書面は地図とともに関係市町村(東京23区と政令指定都市は区)の事務所などに備えられ、誰でも自由に閲覧できる。国土交通省不動産・建設経済局のホームページ(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/index.html)でも閲覧可能。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません