自治体窓口のキャッシュレス化、未導入多く 千葉県内

千葉県内の自治体で、今年に入り窓口業務のキャッシュレス化の動きがにわかに進み始めている。背景には新型コロナウイルスに対応する狙いもあり、1日には四街道市が専用端末を導入、浦安市もスマートフォンアプリのQRコード決済を導入した。利用者の利便性向上に加え、窓口業務の負担軽減にもつながると期待されるが、県内で対応済みの市町村はまだ少ない。
四街道市は1日、パナソニック社の決済端末を導入し、窓口での手数料支払いをキャッシュレス化した。対象は、窓口で支払う戸籍謄本や住民票、印鑑登録証、課税証明書、所得証明書などの発行手数料だ。各種クレジットカードや交通系ICカード、「iD」などの電子マネーや非接触決済が利用できる。
同市の指定金融機関である京葉銀行とグループ会社の京葉銀カード(千葉市)が導入を支援した。京葉銀の担当者は「県内の他の市町村でも、今後導入を支援したい」と話す。
「電子マネーは使えないのか」「小銭の手持ちがない」。市役所の利用者からそんな声が上がっていたため、キャッシュレス化のニーズは高いと考えていた。ただ、決済端末の導入に際しては、複数決済に対応できること、業務負担にならないこと、コロナの感染対策ができること――が課題だった。
導入した決済端末は米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」が搭載されているため、アプリをダウンロードして使用できる。従来は窓口業務の終了後、職員がレジの数字を手入力していたが、導入した決済端末はPOS(販売時点情報管理)機能の付いたアプリを入れており、端末だけで会計を管理できるため業務負担軽減につながるとみる。
端末は客側にもタッチパネルがあり、職員が操作するパネルを利用者が触らずに済む。非接触決済にも多く対応しているので、コロナ感染防止にも役立つ。海外で主流になっているクレジットカードのタッチ決済もでき、コロナ収束後に外国人の利用が増えても対応できるようにした。
浦安市役所も1日から「PayPay(ペイペイ)」などスマートフォンアプリのQRコード決済を導入。同市は2020年に交通系ICカード、21年3月からクレジットカードが使えるようにし、徐々に使える決済手段を増やしてきた。市の担当者は「窓口での時間短縮につなげるため、幅広い決済方法が使えるようにした」と話す。
木更津市と市川市は1月、君津市と袖ケ浦市は6月から、それぞれキャッシュレス決済に対応している。
ちばぎん総合研究所(千葉市)の「千葉県におけるキャッシュレス決済の動向」調査では、20年6月時点でキャッシュレスを導入しているのは3自治体、「導入予定・検討中」が4自治体だった。残る47の自治体は「導入未定」や「不明」などとの回答。今年に入って導入が進んでいるが、なお未導入の自治体が大半だ。
国の後押しもあり、20年の日本の個人消費に占めるキャッシュレス決済の割合は29.7%と増加傾向にある。楽天インサイト(東京・世田谷)の「キャッシュレス決済に関する調査」(20年6月)によると、「今後、さらにキャッシュレス決済手段を利用できたらいいと思う場所」について、「役所や行政サービスなど」と答えた人は33%(複数回答)だった。
ちばぎん総研の五木田広輝主任研究員は「自治体によってデジタル化の優先順位は異なるが、窓口業務が多い市町村でのキャッシュレス化は市民の満足度向上や業務効率化につながる」と指摘する。