フィデアHD次期社長「改革進める」 シェア拡大に意欲

荘内銀行と北都銀行を傘下にもつフィデアホールディングス(HD)は6日、新野正博専務執行役(58)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。4月から始まる新たな中期経営計画に合わせ、7年ぶりのトップ交代となる。徹底したコスト削減や持ち株会社主導の業務効率化を推し進めた田尾祐一社長(64)は会長に就く。次期社長は田尾社長の路線を継承しつつ、地盤である山形・秋田の両県でシェア拡大に意欲を見せた。
「不断の改革を進め、そのスピードを上げていく」。6日に仙台市内で開いた記者会見で新野氏は抱負を語った。新野氏は2019年にみずほ銀行からフィデアHDに移り、営業や人事、総務などを担うチーフマーケティングオフィサー(CMO)を担ってきた。出身母体のみずほ銀では長くリテール部門を歩き、フィデアでは田尾社長の営業部門改革を右腕として主導してきた。
自身の人柄については、「組織のトップに立つタイプではない」としつつも、「構造改革を進めるため腹をくくってやる。いろんな人の話を聞き、独善的にならないようにしており、経営の場でも実践したい」と話した。

会見では、田尾社長が進めてきた路線の継承を表明。とりわけ一丁目一番地として取り組んできた法人・個人の一体営業を一段と強化する方針を示した。長らく赤字が続いた顧客部門業務純益が22年3月期に黒字化したことを踏まえ、「黒字化を定着させ、お客の求めるものに徹底的に応えることで、ライバル行に対しシェアを伸ばす余地もある」と意気込みを示した。
フィデアは2月、10年に注入を受けた公的資金を2年前倒しで完済した。企画をHDが担い、各行が営業に専念する経営体制を敷き、連結純利益は安定して30億円台を維持できる体質に改善。店舗戦略の見直しを進め、この5年間で経費を50億円近く削減できたことが完済につながった。
田尾社長は「公的資金を返済でき、新たな中期経営計画がスタートする。次のステージで新たな改革が進むため、新しい体制、若い力で進むべきだ」と交代の背景を語った。今後も子会社である荘内銀の会長職、北都銀の取締役は兼務を続けることで両行との連携を強め、次期社長をサポートする方針だ。
フィデアは3代続けてみずほ銀出身者がトップを務めることになる。新体制では会長、社長、副社長、取締役会議長の4席をみずほ系出身者が占める。田尾社長は「なるべく地元の人間が経営してほしいし、すべきだ」と話した。一方で、IT(情報技術)部門や運用部門など「他行にない専門性を備え、新しいものを取り入れるためにメガバンクなどからの応援が必要」とも述べた。
フィデアは東北で初となる越県の金融グループだ。ただ、発足から10年以上がたつが参加行は増えていない。22年2月には、経営統合で合意していた東北銀行との合意解除を発表した。新野氏は「経営統合は一つの選択肢になると考えている。ただ規模を大きくするだけ、仲間を増やすだけ、というような経営統合自体が目的となるのは意味がない」との考えを示した。
地域金融機関を巡る経営環境は厳しさを増している。フィデアが得意としてきた有価証券運用は海外金利の上昇などで運用難が続き、店舗削減を基調としたコスト削減の余地も狭まっている。田尾社長が7年間で育てた経営路線を継承しつつ、新たな成長戦略をどう描くのか。次期トップは難しいかじ取りを担うことになりそうだ。
(南畑竜太)
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