精神疾患リスクを尿で検査 セルスペクトと薬王堂

医療関連スタートアップのセルスペクト(盛岡市)とドラッグストア大手の薬王堂は、尿に含まれる物質からうつ病など精神疾患の発症リスクを検査するサービスを8月中旬に始める。問診以外でリスクを客観的に判断できる取り組みは国内外でも珍しいという。
新型コロナウイルス禍による巣ごもりなどが続くなか、精神的な不調を訴える人が増加している。産業医らの間でも客観的な検査のニーズが高まっており、両社はこうしたニーズに対応する。

検査サービスは、精神疾患の患者の尿に大量に含まれている物質「バイオピリン」に着目。薬王堂が店頭やネットで販売する採取キットに尿を入れ、同社の110店に設ける「検体受付スポット」に持ち込むと、登録衛生検査所を保有するセルスペクトが回収して検査する。検査は郵送やセルスペクトと提携する医療機関でも受け付ける。
結果は検体回収から3日以内にスマホなどに通知し、検出されたバイオピリンの量を表示する。精神疾患の発症リスクがどの程度高いか分かるようにするとともに、医療機関への受診を促す。

検体の検査には自社開発したキットを使用。くぼみが96カ所ある専用の「ウエル」に、2002年に東京医科歯科大学の山口登喜夫准教授(当時)が開発した抗体を薄く塗ったもので、7種類の試薬で処理した検体を垂らすと、バイオピリンが含まれている場合は黄色く反応し、色の濃さで量も分かるという。
検査キットは薬王堂で扱う尿の採取キットの発売にあわせ、セルスペクトが医療・検査機関向けに販売する。尿採取と検査の両キットの価格については今後詰める。
バイオピリンに着目したのは、山口氏が02年に会話で緊張した人の尿に多く含まれることを発見したのがきっかけ。セルスペクトが同氏らと15年に開発した測定キットを使って宇宙航空研究開発機構(JAXA)や京都看護大学などと研究を重ねた結果、精神疾患発症直前の「ARMS」と呼ばれる精神状態かどうか判断するのに有効であることが分かり、実用化に踏み切った。