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「映える浜」支え続けたゴミ拾い 香川・父母ケ浜

四国の売り方第5部 海と生きる

ちちぶの会が月に1度実施する父母ケ浜の清掃には、多くの地域住民が参加する(5日、香川県三豊市)

四国は海と共に生きてきた。漁業や製塩業にとどまらず、時代の流れと共に新しい産業を生み出し、地元経済に潤いを与えた。連載企画「四国の売り方」第5部では、最も身近な地域資源である海に注目する。事業者の減少、新型コロナウイルスによる観光業の疲弊など地域が抱える課題は山積みだが、地の利を生かして前に進もうとする取り組みを追う。

9月5日午前6時、まだ朝もやの残る父母ケ浜(ちちぶがはま、香川県三豊市)に、80人ほどが海辺のゴミ拾いをするために集まっていた。初めて参加する人もおり、それぞれが挨拶を交わしながら打ち上げられたゴミを黙々と拾っていく。

香川県三豊市の父母ケ浜では幻想的な写真を撮影できる(三豊市観光交流局提供)

干潟の水面に大空が映り込む合わせ鏡のような幻想的な風景で、インスタ映えする写真が撮影できると爆発的に知名度が高まった父母ケ浜。普段なら足元に注意は向きにくいのだが、視線を移してみれば、ペットボトルのキャップや細かくなった発泡スチロールの断片、空き缶やストローなどが砂に埋まっているのに気付く。

月に1度の清掃活動を実施する「ちちぶの会」は1996年、父母ケ浜を埋め立てて工業用地などに転用する計画に反対の姿勢を示すため立ち上がった。当初のメンバーは7人。当時は今よりも大きなゴミが多く、タイヤや冷蔵庫なども流れ着いていたという。以来20年超にわたって、ゴミ拾いを続けてきた。

約1時間の清掃で、20袋を超える分のゴミを回収した(5日、香川県三豊市)

埋め立て計画が撤回された後も会は解散しなかった。設立当初からのメンバーである森一恵さんは「特にルールもなく、参加を強制されなかったことが継続できた理由だと思う。地元に多くの人が訪れるようになり誇らしい」と話す。会員は150人にまで増えた。

しかし一つの海岸を清掃すれば海ゴミの問題が解決するわけではない。父母ケ浜では青や緑の、筒状でころころとしたプラスチックがあちこちで見つかる。「最初は何かわかりませんでしたが、カキの養殖に使われる資材なんです」と藤田一仁会長。

内海である瀬戸内海には隣接する各県のゴミが滞留しやすい。父母ケ浜でも来訪者が残したゴミは一部で、ほとんどが海を渡って流れ着いたものだという。美しい風景を維持するためにも、各地域ごとの取り組みだけでは根本的な解決につながらない。広域での対応が不可欠だとの声が高まっている。

海ゴミ問題への危機感を背景に、県境を越えた取り組みも動き始めた。日本財団(東京・港)の呼びかけに香川、愛媛、広島、岡山の瀬戸内4県が応じ、海洋ゴミ対策を進めるプロジェクト「瀬戸内オーシャンズX」が昨年発足した。同財団によると瀬戸内の海洋ゴミは年間約4500トンで、域内の発生・流入が大半を占める。

プロジェクトは調査研究や啓発活動を進め、地域間連携や政策の策定につなげてゴミの流入量を削減する。5年で15億円の総事業費を見込んでおり、その取り組みを「瀬戸内モデル」として全国に発信していく計画だ。

父母ケ浜では地道な取り組みが、地元の人にしか知られていなかったような場所に全国の観光客を集めることにつながった。四国には知名度が低くても魅力的な海が多くある。地元の支えと県境を越えた対策が組み合わさることによって地域資源が花開き、観光業の発展につながっていく可能性がある。(桜木浩己)

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