災害時に要配慮者支援 金沢医科大、自治体用システム - 日本経済新聞
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災害時に要配慮者支援 金沢医科大、自治体用システム

金沢医科大学とソフト開発のアイパブリッシング(金沢市)は災害時に支援が必要な要配慮者が情報を地元の自治体と共有できるシステムを開発した。本人または家族がスマートフォンのアプリで薬や医療機器といった情報を登録・更新し、自治体はその情報に基づいて防災対策や支援に役立てる。高知県内での実証実験を踏まえ、2022年春にも商品化する計画だ。

災害看護学が専門の金沢医科大の中井寿雄准教授が、医療分野のスマホアプリ開発の実績があるアイパブリッシングと連携した。要配慮者や家族が支援に必要な情報を入力する当事者参画型のシステムで「K-DiPS」と名付けた。要配慮者向けアプリ「K-DiPS Solo」と自治体向けシステム「K-DiPS Online」で構成する。

要配慮者向けアプリは自分のスマホにインストールし、住所や家族構成などの基本情報のほか、かかりつけ医や訪問介護事業所、必要な医療器具、薬などの情報も入力する。お薬手帳のほか、医療機器や衛生材料など、ほぼ全ての項目で写真撮影の形で登録できる。

自治体向けのシステムはセキュリティーの確保とユーザーの了承を得た上で、インターネットでアプリの情報を収集することができる。自治体の端末から要配慮者の位置が地図上で把握できる。カーソルを合わせると、日常生活でどの程度の支援が必要かが詳しく分かる。

自治体には平常時に人工呼吸器の非常用電源の確保など防災対策の検討につなげてもらう。災害時には、人工呼吸器の非常用電源を優先的に持って行く先の判断などに役立てる。本人または家族がアプリで情報を更新すれば、最新情報に基づいた支援が可能だ。

実験は高知県南国市とNTTドコモの協力を得て、同市で8月から始まった。自主防災組織の役員ら約10人の住民が実験用の端末で自分の情報を入力して送信、市の端末でその情報を確認する内容だ。ほぼ実験が終了し、市は効果を検証し、本格導入できるかどうかを検討していく。

顧客の対象は市町村など自治体が中心となるが、多くの患者がいる病院も想定されるという。アイパブリッシングの福島健一郎社長は「自治体にはできるだけ低い利用料金で提供できるようにしたい。事業化に向けて協力を得やすいように、K-DiPS専門の事業会社なども検討したい」と話す。通信機能は加えられていないものの、要配慮者向けアプリは無料でダウンロードできる。

東日本大震災では停電で人工呼吸器が使えなくなったケースがあり、災害時の要配慮者支援のあり方が課題になっている。中井氏は「いざという時に自分の情報を開示できるのが自助と考える。逃げるときはスマホと財布を持つといわれるので、スマホに情報を入れる仕組みがいいのでは」と指摘する。

(石黒和宏)

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