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高松の繊維企業が循環テーマの商業施設、残糸も活用

繊維製品の製造・卸・小売りの中商事(高松市)が11月25日、本社敷地内に「循環」と地域活性化をテーマにした新タイプの物販・飲食店を開業した。古着やアップサイクル品に加え、工場の残糸や残反、リサイクルによる生活雑貨などを扱う。地域の特色を生かした持続可能な企業を目指す。

高松市東部に位置する半島の街に本拠を置く同社。高級石材「庵治石(あじいし)」の産地として加工場が集中する。新店舗の入り口付近には庵治石製のブックスタンドといった商品も並ぶ。

老舗の繊維卸売業として発展してきた同社は、大阪の百貨店や高松市中心街といった都市部で出店してきた。今回の対照的な出店は地元活性化につながる資源循環型社会の実現を目指す狙いが込められている。

ショールームを改装した新店舗は「AJI CIRCULAR PARK(アジ サーキュラー パーク)」。広さは約400平方メートルで、生活雑貨も含めて2000点弱の商品が並ぶ。

コンセプトは「つどう、つながる、めぐる」。衣料品や雑貨、日用品は持続可能性や環境配慮の視点でのセレクトショップで、トレンドに左右されない高品質の衣料、普遍的なデザインといった長く使用できる商品をそろえたという。このほか古着のゼロ円交換コーナーも設置した。後日、不要となった衣服を持ってくることが条件で、循環を生み出す。

また日用品では焼き物の器やガラスコップ、竹製の歯ブラシなどを用意した。焼き物は瀬戸内の離島の海岸の土や野菜残さ、見ごろが終わった植物などを原料に、コップは香川県丸亀市にあるごみ処理施設のガラス工房で製造された商品だ。

さらに自社のニット製品の工場で残った糸のほか、革製品の端切れも扱う。香川県東かがわ市の地場産業である手袋の製造過程で発生したものだ。

一方、飲食コーナーでは保存に適したベーグルを提供している。素材には地元開発の小麦粉「さぬきの夢」を使用している。またオーガニックコーヒーも用意、素材にこだわるとともに廃棄も抑えるという。

新店舗では今後、ミシンや刺しゅう機を設置し、2023年春から衣料品の直しやリメークサービスも実施する計画だ。

繊維・ファッション業界は大量生産・大量消費型の産業として発展してきた。同社の中貴史社長は「SDGs(国連の持続可能な開発目標)を重視する流れの中で、アパレル業界に身を置く立場として『作る責任、使う責任』に注目して(新店舗を)考えた」と話す。

同社は「問屋としてつなぐ役割を担ってきた。今まではモノだったが、地域と人をつなぐ、都会と瀬戸内をつなぐといった役割を続けていきたい」(中社長)と、発想の転換を強調する。

新店舗内ではワークショップも開いている。余った生地からカラフルなアート作品をつくる内容だ。今後はマルシェも開催していく。「つどう」というコンセプトに沿って、廃棄物問題や地産地消で地域の様々な人々とつながる公園のような場所にしていきたい考えだ。(竹内雅人)

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