新潟県の原発検証・避難委が報告書 3つの検証の一つ

新潟県が設置した原子力災害時の避難方法について検証する委員会(避難委員会)は3日、新潟市内で会合を開いた。事故情報の伝達体制、放射線モニタリングや安定ヨウ素剤の配布・服用など99項目456の論点を盛り込んだ報告書をまとめ、県に検討・対応するよう求めた。関谷直也委員長(東京大学大学院准教授)が今後、花角英世知事に報告書を提出する。
関谷委員長は会合後、記者団に「ようやく報告書をまとめられた。原子力防災を進めるスタートラインだ」と語った。「(原子力発電所を)再稼働するかどうかにかかわらず、原発がある限りは原子力防災を強く認識してほしい」と強調した。報告書の提出時期は「県と相談して決めたい」と述べた。
避難委員会は東京電力ホールディングス柏崎刈羽原発の再稼働の議論を始める前提となる「3つの検証」のひとつ。福島第1原発事故を踏まえた原子力災害時の安全な避難方法を検証してきた。2017年9月に初会合があり、今回が24回目だった。ほかに福島第1原発事故の原因、事故が住民の健康や生活に与えた影響を検証する委員会も設置されている。
「3つの検証」の作業を束ねる総括委員会は21年1月以降、開かれていない。花角知事は8月31日の記者会見で「避難委員会の議論がまとまって報告をもらえれば、間を置かずに総括委員会を開きたい」との考えを示している。
関谷委員長「避難の検証に意義」

関谷直也委員長(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授)と記者団の主なやり取りは次の通り。
――24回の委員会を振り返って感想は。
「ようやく報告書をまとめられた。これをスタートラインに原子力防災を進めてほしい。普通の防災と違い、放射線の影響が考えられる事故はどのような形で起こるか分からない。再稼働するかどうかにかかわらず、原発がある限りは原子力防災を強く認識してほしい」
「(原子力災害時の)避難に関する検証が政府や公的機関で行われることはなく、本格的にしたのはこの委員会が事実上、初めてだ。開かれた場で論点を整理したケースは他にない。非常に意味があった」
――県に求めることは。
「検証は課題の整理にすぎない。被曝(ひばく)を抑えながら避難できるかどうかは今後の取り組みにかかっている。原発再稼働と直結して議論されることが多いが、柏崎刈羽原発がある限り、稼働していなくても様々なトラブルの可能性はあり得る。攻撃対象ともなり得る。原発がある限り避難を考えてほしい」
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