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宮城県亘理町 協力隊、アートでにぎわい創出

東北6県気になる現場

宮城県の沿岸部は交流人口を奪い合う激戦区だ。東日本大震災で被災し、復興の過程でにぎわい創出を目指した観光エリアの開発が自治体ごとに進んだ。そんな中、震災前には海水浴客などでにぎわっていた宮城県亘理町荒浜地区にある鳥の海エリアの再開発は、全国からの担い手集めから始まった。施設ありきではない「人の魅力」で勝負する。

「ここ、懐かしい!」。2月の週末、亘理町の郷土資料館で開催中のアート展「アーティストから見た亘理」の会場では、来場者の楽しげな声が飛び交う。町民などに地元で大切な場所を書き出してもらった画用紙とそこの写真を合わせ、地図に示した「感情マップ」のブースでは、今はなき思い出の場所も並ぶ。

アート展を企画・開催したのは、地域おこし協力隊として全国から集まったアーティストたちだ。鳥の海エリアを活動拠点として、同エリアのにぎわい創出を目指す「WATARI TRIPLE C PROJECT」(ワタリトリプルシープロジェクト)の発足に合わせて集まった。今回が初のアート展で、来場した男性は「ずっと住んでいたら思いつかない視点がつまっていた」と話す。

メンバーは2025年の大阪・関西万博の構想にも携わるメディアアーティストの市原えつこさんなど、海外での活動経験も豊富な県外から移住してきた多彩な7人だ。2021年8月から順次亘理町に住み、地域のイベントに参加したり、ワークショップを開催したりと住民と交流しながら作品を創作中だ。

「ワタリトリプルシープロジェクト」は防災事業が本業のワンテーブル(宮城県多賀城市)が手掛ける。亘理町が地域住民と策定した鳥の海エリアのにぎわい創出のコンセプトを基に、21年1月に具体的なアイデアを民間に公募し、ワンテーブルの案が採択された。

プロジェクトは「街づくりをしながら夢をかなえる」をコンセプトに担い手となる地域おこし協力隊のオーディションから始まった。アーティストやミュージシャン、サーファーやスケーターなど8つの分野で募集。亘理町から各分野で世界を目指しながら地域住民と交流することで文化の創造、発信、定着を目指している。亘理町にとっては初めての協力隊の募集となったが、定員が30人のところ、80人以上の応募があった。

同町の周辺自治体である山元町や名取市、仙台市では震災復興の過程で温浴施設や観光農園、スポーツ施設などの建設が相次ぎ、どの沿岸部でも観光需要の取り込みが目指されている。もともと鳥の海エリアは、仙台など周辺自治体から観光客が集まる拠点で震災前は町全体の入込数が90万人ほどあった。だが、足元では約70万人に落ち込む。

「ほかの観光エリアとの違いは人。人に会いに来る場であってほしい」。亘理町でプロジェクトを担当する猪股裕二郎さんは断言する。6月には鳥の海エリアにカフェがオープンする予定で、メンバーとの交流もしやすくなる。上級者向けスケート施設の整備なども予定され、町は25年度に震災前を上回る100万人の集客を目指している。

アート展のアーティストにプロジェクトに参加した理由を問うと「震災の時に何もできなかったから」「歴史や住人の存在を感じる町おこしがしたい」「偶然出会った人の記憶を大切にしながら表現したい」など様々だ。多様な人を引き付けうる魅力の源泉がここにある。(渡辺絵理)

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