中国人旅行者への対応、各国で分かれる 旧正月控え

新型コロナウイルスの感染者が急増する中国からの渡航者の受け入れを巡り、各国・地域の対応が分かれている。米国や韓国などは入国前後の検査や陽性者の隔離といった水際対策をとる。だが、欧州連合(EU)やシンガポールなどは特別な措置を決めていない。2023年1月下旬の春節(旧正月)前後の大型連休に海外に出る中国人は多いとみられ、警戒が広がる可能性もある。
韓国は30日、中国からの入国者への検査や陽性者の隔離を軸とする水際対策を発表した。23年1月2日から1月末まで旅行など短期ビザの発給を制限するほか、中国発の航空便の増便は認めず、入国者を管理するために到着便を仁川国際空港に一元化する。中国から旅行目的の訪問は事実上できなくなる厳しい措置を講じる。
マレーシアは30日、中国を含む海外からの入国者全員の体温を測定する新たな対策を公表した。発熱など症状があり、新型コロナの感染が疑われる人は検査をする。また、中国からの航空便のトイレ排水などを検査し、陽性の場合は遺伝子解析を施す。

米国は23年1月5日から搭乗前48時間以内の陰性証明書の提示を義務づける。日本は30日から中国の入国者に対して検査を義務づけ、陽性で症状がある場合は原則7日間の隔離を求める対策を始めた。
スペインは30日、陰性証明かワクチン接種証明の提示を求めると決めた。イタリアは中国人旅行者を検査し、陽性者は隔離する方針。フランスのメディアによると、同国のマクロン大統領は対策の検討を指示した。
一方、これら3カ国が加盟する欧州連合(EU)は29日の時点で、渡航制限など特別な水際対策は必要ないという立場だ。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は「EU域内の市民の免疫力が向上している」という。英国も29日の段階で水際対策の予定はないと説明する。
シンガポールも28日の時点で特別な対策を取らない方針だ。観光業に配慮した可能性がある。
全体に中国と政治・外交で距離のある国が水際対策を強化しているようにもみえる。だが、各国・地域はあくまで「防疫上の措置」として検討しているとの立場だ。
中国外務省の汪文斌副報道局長は30日の記者会見で「多くの国の医学専門家は中国からの入国に対して制限は不要だと主張している」と説明。日本などの入国規制について「各国の防疫措置は正常な人の往来に影響すべきではない」と批判した。
中国は感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ政策」を転換し、出入国規制の緩和に乗り出した。23年1月8日からは入国前48時間以内のPCR検査での陰性証明を提示すれば中国に入国できるようにする。入国時のホテル隔離も撤廃し、ビジネスや留学目的の外国人の来訪を促す狙いだ。
入国時の規制緩和は、中国人の海外旅行の再開につながる。中国の国家移民管理局は27日、コロナ禍で止まっていた海外旅行のためのパスポート申請手続きを「秩序をもって受け付けを再開する」と発表した。この発表後、中国旅行サイト大手の携程旅行網(シートリップ)で海外ビザ情報の検索数は4倍に増えた。
(田口翔一朗)
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