ドイツ、ナミビアでの大量虐殺認める 植民地統治時代

【ベルリン=石川潤】ドイツ政府は28日、20世紀初めに植民地統治時代のナミビアで行った残虐行為について「民族大量虐殺(ジェノサイド)」だったと正式に認めた。マース外相は声明で「計り知れない苦しみ」を認めた証しとして、復興と開発を支援するため11億ユーロ(約1500億円)を拠出すると表明した。
声明では「歴史的、道義的なドイツの責任に照らし、我々はナミビアと犠牲者の子孫に許しを請う」と明記した。ただ、11億ユーロは賠償ではなく支援プログラムという位置づけで「法的な賠償の要求につながるものではない」と強調した。ドイツに対しては、ナチス時代の被害を巡ってギリシャなどでも賠償を求める動きがある。
マース外相は「過去に終止符を打つことはできない」としたが、同時に「罪を認め、許しを請う」ことは犯罪行為を検証し、ともに未来を形成していくための「重要な一歩」だと語った。ドイツはこの問題でナミビア側と6年近く交渉を続けていた。
ドイツは1884~1915年にかけて、現在のナミビアを植民地として統治していた。ドイツメディアによると、1904~08年にヘレロ族とナマ族が蜂起した際、ヘレロ族8万人のうち約6万5000人、ナマ族の2万人のうち少なくとも1万人が殺害されたという。20世紀最初のジェノサイドと呼ばれることが多い。
ドイツはナチス時代のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)などと比べ、植民地統治時代の行為に対する取り組みが不十分との指摘があった。ドイツメディアによると、両国議会による承認手続きを終えたあと、シュタインマイヤー大統領がナミビア議会で正式に謝罪する見通しだという。